No.1 レンゲツツジ

レンゲツツジ

科・属名

ツツジ科 Ericaceae

ツツジ属 Rhododendron

学名

Rhododendron japonicum (A.Gray) Suringar

英名

Japanese azalea

和名の由来

レンゲツツジの名は仏の蓮華のように花が輪状に並ぶことに由来する。

学名の由来

Rhododendron ギリシャ語のrhodonバラ色の+dendron樹木の意。Japonicum 日本産の

木の特性

分布

北海道南部、本州、四国、九州。日当たりの良い草原、湿地、明るい二次林などに生育。

形態

落葉低木。

葉は長さ7㎝ほど、先端は鈍頭。基部は細くなり葉柄に続く。葉脈は裏面に飛び出し、両面は有毛。葉縁にも毛がある。葉の先端には色の薄い突起状のものがある。

初夏に葉が展開する頃にロート状の合弁花を枝の先端に数個付ける。花は朱色-赤。雄しべは5、花糸の基部には細毛がある。雌しべは1。花柄に腺毛。

果実は朔果、長さ3㎝程度、先端に雌しべが宿存。

特性

花にロドヤポニン-I,Ⅱ、Ⅲ、葉にグラヤンボトキシン-Ⅰ、根皮にスパラッソルを含む。ロドヤポニンはツツジ科カルミア属、ツツジ属などに含まれ、強い毒性を有するグラヤノトキシン骨格を持つ化合物群の一つ。

グラヤノトキシン類はツツジ属の花から集められた蜂蜜からも見出されている。参考:グラヤノトキシンⅠのマウスでの半数致死量は1.31mg/kg(内服)。グラヤノトキシンには血圧降下作用がある。

レンゲツツジ2

生薬

生薬名

羊躑躅:神農本草経(下)はトウレンゲツツジ Rhododendron molle G.Don

またはシャクナゲ

使用部分

採集時期・方法

花期に花を採取、日干しにする。

薬性・薬味

辛 温

応用・利用

有毒なので、薬用には利用しないが、民間で殺虫・蛆ごろしや皮膚寄生虫の駆除薬に使用されたことがある。

駆風・除湿・止痛の作用があり、中国では「リュマチによる頑固なしびれ・骨折疼痛・皮膚頑癬などに用いられる」という記載がある。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

花、葉、根を酒に入れてエキスを作り、神経痛、リウマチ、痛風などの鎮痛剤として、また、消炎剤として飲用する。外用としては酒エキス、あるい粉末を患部に塗布する。

有毒なので、家畜などの動物が食べず大群落をつくる。

漢字の「躑躅」(つつじ)の語源は中国である。毒性のあるツツジを羊が食べたところ、足踏みしてもがき苦しみ、うずくまったと伝えられている。この様な状態を躑躅(てきちょく)といい、この語には「行って止まる」つまり「躊躇」(ちゅうちょ)の意味のあることから、美しいツツジは見る人の足を止めると言う意味で使われたとも言われる。

ツツジ科植物の毒性は古くから知られており、BC4にギリシャの軍人、著述家のクセノフォンの記述のなかで兵士がツツジ属から得た蜜で中毒したと記録している。

このように花の蜜に麻痺を含むので養蜂家はレンゲツツジの自生地では蜂蜜を採取しない。

放牧地の家畜も毒性を嫌い食べ残すのでレンゲツツジの群生地となるところが多い。

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No.2 トウネズミモチ

トウネズミモチ

科・属名

モクセイ科 Oleaceae

イボタノキ属 Ligustrum

学名

Ligustrum lucidum Ait.

英名

Wax tree privet (イボタノキ)、glossy privet

和名の由来

中国渡来のネズミモチ。果実がネズミの糞に似て、葉がモチノキに似ることに由来。

学名の由来

Ligustrumはイボタノキ属の1種の古名に由来。

イボタノキ属は広くヨーロッパ、北アフリカ、アジア、オーストラリアに原産する一般的植物。

Lucidum 強く光沢があるの意

木の特性

分布

中国中南部原産、明治初期に渡来

形態

常緑小高木。ネズミモチによく似るが全体に大きい。

樹皮は灰色、平滑、若木にいぼ状の皮目が目立つ。老木では縦に裂け目が出来できる。

葉は対生、卵形からだ円形、葉縁は全縁。ネズミモチより大きく、葉脈が目立つ。

花は6-7月に咲き、枝先に円錐花序が多数つき、ネズミモチより花序は大きく、淡黄色の花冠は4裂し先端が反り返る。雄しべ2は長く花冠から飛び出し、雌しべ1は短い。

果実は核果、初冬に黒紫色に熟し、表面は平滑、やや球形。

種子は8ミリ程度、縦に溝がある。

果実は朔果、長さ3㎝程度、先端に雌しべが宿存。

特性

果実にトリテルペン類のオレアノール酸、ウルソール酸、アセチルオレアノール酸、マンニトールなどを含む。果実は滋養強壮、葉には解熱、鎮痛作用がある。病害虫や郊外に強いので垣根などにされる。

トウネズミモチ3

生薬

生薬名

女貞実:神農本草経(中)はトウネズミモチ Ligustrum lucidum Ait.で同じ

使用部分

成熟果実

採集時期・方法

晩秋成熟した果実を採取、軽くいぶして、枝葉を取り除き、稍蒸すか、或いは直接、日干し乾燥。

撰品

肥大して、黒褐色を呈しているもの

主な薬用成分

oleoric acid、マントール、ブドウ糖

公定書

日本薬局方 ―

局外生規  ―

中共薬典  ―木犀科植物 女貞Ligsturum lucidum Act. 的乾燥成熟果実

薬性・薬味

苦 平

応用・利用

補肝腎・補陰・明目の作用を持ち、滋養強壮薬として腰膝痛・めまい・耳鳴り・動悸・不眠・しらが・視力減退・かすみ目などに使用する。

民間療法として、日本では葉を湿疹 かぶれ(入浴) 腫れもの(生の葉を水で柔らかくなるまで煮て、患部に貼る)に使用する。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹。果実は生薬。 種子を多数付けることから、種子を栽培して街路樹、公園樹などに植栽する。都市部では種子の発芽率は高く、鳥などが散布し、おのれ生えが庭などによく見つかる。現在は要注意の外来種となっている。

果実は果実酒になるが、美味とは言えない。

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No.3 マルバアオダモ (別名 ホソバアオダモ)

マルバアオダモ2

科・属名

モクセイ科 Oleaceae

トネリコ属 Fraxinus

学名

Fraxinus sieboldiana Blume

英名

Japanese Flowering Ash

和名の由来

マルバとは葉縁がなめらかできょ歯がないことによる。アオダモの意は、枝を切って水に入れると紫外線で藍色の蛍光を発することによる。

老木の葉が細長くなることから別名ホソバアオダモ。

学名の由来

Fraxinus は英語名ashのラテン語、槍の意

Sieboldiana 19世紀に来日したドイツ医師、博物学者の名。

木の特性

分布

朝鮮半島、日本(北海道、本州、四国、九州)低山の日当たりの良い尾根、丘陵地などを好む。

形態

落葉高木。雌雄異株、雌株には両生花もつける。

若い枝は緑色、翌年に灰白色になり、平滑、表面に地衣類が付着する。老木では樹皮は縦に割ける。

葉は対生、葉柄は長く、3-5小葉の奇数羽状複葉、葉身は5-10㎝。幼木の小葉は丸いが成木では細長くなる。葉の裏面の主脈沿いに白毛が生じる。葉縁は全縁で波打つ。

同属のアオダモはきょ歯がある点で区別出来る。

花は春に咲き、当年枝に円錐花序が対生し、白色、花弁4は線形、6㍉程度。雄しべは2で雄株と雌株にあり両生花もある。雌しべ1は雌花のみにあり,柱頭が赤みを帯びる。

果実は2㎝ほどの長い翼果、基部に種子を1個つける。

特性

マルバアオダモは本州、四国、九州に分布する落葉高木だが、同属のシマトネリコ(F.griffithii C.B.Clarke)は、亜熱帯に分布し、耐寒性があるので本州の植栽でも生育する常緑高木。同じく同属のシナトネリコ(F.chinensis Roxb.)は主に中国に分布する落葉高木で、樹皮、葉とも止血、解毒、調経などの作用があり、できもの、月経不順に利用される。

トネリコ属樹木からはセコイリドイド類、フェニルプロパノイド類、フラボノイド類、クマリン類、フェノール類、タンニン類などの配糖体が単離され、消炎効果、抗菌性、抗酸化などが検討されている。

アオダモ類の材は心材の割合が少なく、辺材と心材の境界もあまり明瞭でないものが多い。辺材は黄白色、心材は淡黄褐色であり、年輪ははっきりしている。木理は通直、肌目はやや粗である。

マルバアオダモ3

生薬

生薬名

秦皮:神農本草経(中)はシナトネリコ Furaxinus chinensis (Thunberg.)Vahl

使用部分

樹皮・葉

採集時期・方法

春~秋に樹皮を剥ぎ、日に乾燥。

色・味・香り

味は苦い

撰品

外皮は薄く、光滑があり、苦味が濃い者を良品とする

主な薬用成分

fraxetin fraxin

公定書

日本薬局方 ―

局外生規  ―

中共薬典  苦櫪白蝋樹 Fraxinus Rhynchophylla Hance、

白蝋樹Fraxinus chinense Roxb.

光葉白蝋樹 Fraxinus chinense Roxb.  var.acuminata  Lingelsh

宿柱白蝋樹 Fraxinus stylosa Lingelsh 干燥枝皮 又干皮

漢方例

白頭翁湯(傷)

薬性・薬味

苦、微寒

応用・利用

清熱・燥湿・止瀉・明目の作用があり、無月経・下痢などに内服。目の充血・打撲・外傷の出血、できものに外用。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

同属のアオダモ(Fraxinus lanuginosa Koidzumi var.serrata Hara)の材は軽くて粘性が強いので野球のバッド、テニス・バドミントンのラケット枠、スキー材などの運動具材として用いられる。アオダモ、マルバアオは器具材、家具材としても使われるが、より小型の利用、例えば、カンジキや道具の柄などに使われる。

トネリコ属の樹皮は蛍光物質を含み水に浸けると溶け出す。この水に紫外線が当たると青く光るが、樹皮を浸けすぎると水溶性の他の物質も水に溶け出るので確認が難しい。

樹皮の抽出液にはエスクレチン,その配糖体のエスクリン、フラキセチンとその配糖体フラキシンを含みこれらが蛍光を発する原因物質である。

アオダモ、マルバアオダモは、この木の皮を水につけると水が青くなるからアオダモ、と呼ばれるとの説がある。関東・中部地方では葉の形がフジに似ているのでフジキとも呼ばれる。

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No.4 レンギョウ

レンギョウ

科・属名

モクセイ科 Oleaceae

レンギョウ属 Forsythia

学名

Forsythia suspensa (Thunb.) Vahl

英名

Golden bell、 golden bell plant

和名の由来

漢名の「連翹」の音読み。

中国では「レンギョウ」はトモエソウかオトギリソウの意であったが、これらの果実が薬用に用いられていたため日本では誤用された。

学名の由来

Forsythiaはイギリス王立植物園の園芸家W. フォーサイスに因む。

Suspenseは枝が垂れ下がっていること。

木の特性

分布

中国原産。世界中で広く栽培。

形態

雌雄異株。

枝は半つる性で下垂する。枝は地面に接すると不定根を出し栄養繁殖する。茎は中空で薄い膜状の髄を持つ。

葉は対生。長さ10㎝、幅4㎝程度の長卵形。先は尖り、葉縁にまばらなきょ歯。秋に濃緑色、くすんだ黄緑色から紫色へと変化し、落葉する。

早春に葉より先に4弁の黄色の花を細い枝に多数付ける。がく片は花筒と同長。雄しべは2、雌しべ1は長い。

果実は朔果。種子には狭い翼がある。

特性

挿し木で増殖が可能。果実にオレアノール酸(トリテルペン)、フォルチシド(モノテルペン配糖体)、フォルチシドメチルエステル、アルクチイン(リグナン)、マタイレシノサイド、花にケルセチン、アスコルビン酸を含む。

グラム陰性菌の大腸菌、緑膿菌、チフス菌、グラム陽性菌のブドウ球菌、肺炎双球菌、百日咳桿菌などに抗菌作用。オレアノール酸には強い強心利尿作用。消炎、利尿、解毒に効果があり、吹出物、疥癬などの皮膚疾患、高血圧の予防に使用される。

レンギョウ2

生薬

生薬名

連翹  神農本草経(下)は Forsythia suspense (Thunb.)Vahlで同じ

使用部分

果実

採集時期・方法

秋、熟した果実を収穫し、一度蒸した蒸した後、日干しする。7~8月、果実のある全草を日干しにする。

色・味・香り

外面 淡褐色~暗褐色で淡灰色の小隆起点が散在。弱い匂いがあり、味は苦い。

撰品

軸がなく大きくて、香気強い、新鮮なもの

主な薬用成分

トリテルペノイド(betulinic acid)、リグナン(phillygenin)、エニルエタノイド配糖体(hydroyacetoside)、フラボノイド(rutin quercitrin)

公定書

日本薬局方 ―レンギョウFORSYTHIAE FRUCTUS

         レンギョウForsythia suspense Vahl

       またはシナレンギョウF.viridissima Lindley(Oleaceae)の果実

 局外生薬規格―

         木犀科植物 連翹Forsythia suspense (Thunb.)Vahl的

         干燥果実

漢方例

清上防風湯(万病回春)、治頭瘡一方(本朝経験方)

薬性・薬味

苦 平

応用・利用

腫れもの、止血、に内服。薬用酒として、腫れもの・止血に服用。

その他

起原植物として、チョウセンレンギョウF.koreana Nakaiも使用されたことがあったが、現在市場性がない。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

広く園芸樹として庭園などに植栽される。

一般に植栽されているのはレンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウなどでいずれも耐寒性、耐暑性が優れて折り、病害虫にも公害にも強い。

これら3種はよく似ているが、幹を縦割りすると、レンギョウは芽の出る部位以外は中空、シナレンギョウは芽の出る部位も含めて格子状の髄があり、チョウセンレンギョウは芽の出る部分以外で細かい梯子状の髄がある。またシナレンギョウは枝が直立する点で他の2種と異なる。

日本へは薬用に平安時代初期には渡来、8世紀の出雲風土記にも記載がある。

成熟した果実は抗菌作用があり、蒸してから天日で乾燥させて生薬とする。

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No.5 ハマゴウ

ハマゴウ2

科・属名

クマツヅラ科 Lamiaceae

ハマゴウ属 Vitex

学名

Vitex rotundifolia L. fil.

英名

分布が広いので各地で多数の英名がある。Beach vitex, Rounded-leaved chaste tree, Chasteberry, Monk's pepper

和名の由来

ハマゴウはハマホウに由来し、ホウと呼ぶ地域もある。全体に芳香があり、古くは香として用いられたことで「浜香」、また「浜這」とわれたとも。

学名の由来

Vitex ラテン語でつる状の意。Vieoに結ぶの意もある。Rotundifolia葉が丸いの意。

ハマゴウ

木の特性

分布

日本、中国、朝鮮半島、東南アジア、ポリネシア、オーストラリア。

海岸の砂浜に群生。日本では内陸の淡水湖の琵琶湖沿岸にも生育。

形態

落葉低木。 茎は地面を這う海浜植物。

茎には4稜があり、70㎝にも伸びる。匍匐する茎の節には不定根が生じる。古木ではコルク層が盛り上がって縦の稜がいくつもできる。

葉は普通単葉、希に3出複葉、対生。葉の裏面は白毛で被われる。

晩夏に青紫色の花を数個頂生し、花期に茎は立ち上がる。釣り鐘状の花冠は5裂し、唇形で下側は裂片3で、中央裂片は特に大きい。雄しべは4、雌しべは1で花冠より長く、柱頭は2裂する。

果実は核果で、宿存がくに包まれ、淡黒色に熟す。果皮は厚いコルク質で、海流により流される。種子は4個。

特性

果実はα―ピネン、カンフェン、テルピネオールアセテート、ビテキシンカルビン(フラボン類)を含む。

果実は、頭痛、風邪、関節痛、解熱、強壮として、また、浴湯料として用いられる。

葉は、精油、及びカスチシン、ルテオリングルコシドを含み、打撲傷、腫物、出血に用いられる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実、茎葉は薬用。

芳香があるので、線香に使われる。

灰汁は染料とする。

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No.6 クコ

クコ2

科・属名

ナス科 Solanaceae

クコ属 Lycium

学名

Lycium chinense Mill.

英名

Chinese desert-thorn, Chinese boxthorn, Chinese teaplant, chinese wolfberry

和名の由来

中国名 「杞枸」の音読みがクコ

学名の由来

Lycium ギリシャ語、中央アジアのLycia(地名)に生育した、刺の多い木。

Chinense 中国産の意。

木の特性

分布

中国原産。東アジア、北米にも移入。

海岸、川原、田畑の畦など人の手が加わりやすく、高木が生えにくい環境で湿り気のある水辺の砂地を好む。乾燥にも強い。

形態

落葉低木。

茎は細く、分枝しないで、ほふく枝も束生し、多くの枝は上向きに伸びる。長枝上に4㎝前後の葉と2㎝程度の刺が互生する。

薄紫色の花は2㎝程度で晩夏に咲く。花冠は釣り鐘状で5裂。雄しべ5,雌しべ1。

果実は液果で細長く、2㎝程度のだ円形、赤く熟す。

特性

葉はベタイン,βーシトステロールグルコシド、ルチン、ビタミンB1,B2,Cを含む。

果実はベタイン、ゼアキサンチン、フィサリエン、根皮にベタイン、桂皮酸、βーシトステロール、リノール酸を含む。

果実の水抽出物は副交感神経を刺激して心運動の抑制、血圧降下作用があり、また、強い抗脂肝性があり、強壮、肝臓障害予防に用いられる。

クコ3

生薬

生薬名

枸杞子 地骨皮 神農本草経(上)はクコLycium chinense Millerで同じ

使用部分

茎、葉、果実、根皮

採集時期・方法

葉は夏。果実と根皮は秋に採集し、日干し乾燥する。

色・味・香り

果実を枸杞子という。果皮は赤色~暗赤色。特異なにおいがあり、味は甘く、後わずかに苦い。根を地骨皮という。外面灰黄色あるいは黄褐色。内面黄白色。いは弱く、味は少し甘い。

撰品

枸杞子 完熟していて、黄色く赤味がかったもので、黒くないもの。

主な薬用成分

果実 カロチノイド(zeaxanthin physalien)、(betaine)、ステロール(sitosuterol)、根皮 betaine ステロール(sitosuterol)

公定書

薬局方―

  局外生規  ―枸杞子 クコLycium chinense Miller

            L.barbarum L.  の果実

           枸杞葉 L.chinense Millerの葉

           地骨皮  L.chinense Millerの根

  中国薬典:地骨皮 枸杞Lycium chinense Mill.或 

       寧夏枸杞Lycium barbarum L. 干燥根皮

漢方例

枸杞子として、枸菊地黄丸(地黄丸加味方)、 地骨皮として、清心蓮子飲(和剤局方)

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

葉は動脈硬化、高血圧の予防、安眠に利用され、果実は低血圧症、不眠症、強壮などに、共にクコ酒として飲む。

根皮は強壮、消炎、解熱などに漢方薬に用いられる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

わが国の野原、道端、川の土手などの明るい場所に生育し、観賞用や生垣にもされる。

皮は赤熟し、強壮作用があり、果実を生食、どライフルーツに利用。根皮を乾かしたものが地骨皮で、葉を乾したものがクコ葉であり、解熱用に用いる。

果実を酒に付けたものをクコ酒と言い、強壮になる。若葉が香りがよく、浸し物にしたり、茶の代用とすると健康増進に効果がある。

また、飯に混ぜてクコ飯とする。果実、根皮、葉は生薬とする。

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No.7 キリ

キリ

科・属名

ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae

キリ属 Paulowni

学名

Paulownia tomentosa Steud.

英名

Paulownia , kiri, karri tree, princess tree、Empress tree, Princes tree, Foxglove tree

和名の由来

キリは切ると直ぐ芽を出して成長することに由来。

学名の由来

Paulowniaはシーボルトがオランダ王ウィレムⅡの王妃で、ロシア皇帝バーヴェル1の皇女でもあるアンナ・パヴロヴァナに献名。(英名の由来でもある) Tomentosa 毛が密生している。

木の特性

分布

中国、ラオス、ベトナムに自生。

東アジア特に日本と朝鮮半島で栽培される。

日本では北海道南部以南で植栽。

形態

落葉高木。

樹皮は灰褐色、皮目が多い。

若い枝には粘りけのある軟毛が密生する。

葉は大きな広卵形、対生する。若木の葉は5浅裂し、大きく60㎝を越えることもあるが、成木では全縁、全体の形も小さくなる。葉の裏面には星状毛の腺毛がある。

春に30 ㎝程度の円錐花序に合弁の淡紫色の花を付ける。蕾みは前年秋には生じる。がく筒は褐色毛に被われる。雄しべは4、雌しべは1。

果実は朔果、2室に分かれ、無数の翼のある種子を生じる。翼果は初冬に半裂開し、翌春に完全に開く。

種子には膜質の翼があり、遠くまで運ばれ易く、発芽率も高く、樹の成長も早いので野生化したものが各所に見られる。

特性

樹皮にシリンギン(フェノール配糖体)、カタルポール(イリドイド配糖体)、葉にウルソール酸、マテウシノール、材にバウロウニン、イソバウロニン、d-アサリニン、d-セサミンが含まれる。

果実は気管支炎、材は足の腫れに、材は足の腫れに、根及び根の皮は腫物、痔疾に、種子を止血に、あるいは除虫剤として使用する。葉の煎汁をできもの、外傷の患部に塗布する。

材は軽く、比重0.28~0.3程度である。切削などの加工は極めて容易。

キリ2

生薬

生薬名

桐葉 神農本草経(下)はPaulownia tomentosa (Thunb.)Steud.で同じ

使用部分

葉、根、果実

採集時期・方法

6月~8月に採取し、日干し乾燥。

主な薬用成分

木部 pawlownin、果実 elaeastearic acid フラボノイド アルカロイド

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

利尿・おでき・切り傷の止血

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

「大和本草」の中で貝原益軒はキリについて、「切れば早く長ず,故にキリという」と述べている。昔は娘が生まれるとキリを植えて、嫁入りのときのタンスや長持ちを作るのに間に合うと言われ植えられたほどに成長が早い。

キリの中国名は毛泡桐、桐,白桐、日本泡桐である。日本名ではヒトハグサ、ハナギリの名前でも呼ばれている。古来、岩手県の南部桐、福島県の会津桐などがよく知られており、ほかには新潟、茨城、秋田県の桐がよく知られている。近年は国内生産量が、需要に追い付かず、タイワンギリ(Paulownia taiwaniana Hu et Chang)や南米産が輸入されている。

タンスなどの家具に用いられているのはこれらの輸入材によるものが多い。

キリは日本の樹種の中で最も軽く、加工しやすく、割れやクルイが少ない、吸湿性が低いなどの特長を持ち、タンス、家具、調度品、建具、天井板、腰板、欄間、仏壇、彫刻、琴、下駄、羽子板などの玩具類、寄木細工、漁網の浮きなどに用いられる。

また、キリ炭は軟らかく粒子が細かいので、漆塗容器の研磨材、まゆ墨として用いられるほか、火薬用、絵画用,に用いる。葉は除虫用、樹皮を染料として用いる。キリ材は火事などの火に強いと言われている。

これは熱伝導が小さいので、表面が焼け、炭化するとその後は熱を内部に通しにくくなるためである。キリが下駄として優れているのは軽いだけでなく、土に接した時に土粒が材の表面によく食い込んで、その後の磨滅を少なくするからであるとの説がある。

キリの花と葉を図案化した五七の桐の紋章は政府の紋章として使用されている。

キリは古い時代に文学上にも現れてくるように、人々に近い存在であった。源氏物語には「桐壷」の巻があり、枕草子では「桐の花、紫に咲きたるはなほおかしきを~~」と書かれている。

直立した形でいくつも紫の花をつけるキリの花には人を引き付ける魅力がある。

木材としても成長が早く、建材として利用される。日本では、良質の木材として琴、箱、家具特に箪笥の材料とされ、高級家具の代名詞である。

キリは発火し難いため、金庫の内側にも使われる。

伝統的に神聖な木とみなされ、家紋、紋章に用いられた。中国では桐は鳳凰の止まる樹として神聖なものとされ、日本でも天皇家では菊花紋に次いで桐紋が高貴な紋章とされた。

中世以降は将軍家にも許され、五七桐は政権担当者の紋章とされた。足利氏、織田氏、豊臣氏など有名武将がキリの花の紋章を使っている。

近代になると五七桐は日本政府の紋章として勲章に使われ、国章としてパスポート、ビザの表紙に使われ、内閣総理大臣の紋章として官邸の備品に取り付けられたりしている。

桐紋の基本図案は3本の直立する花序とその下に3枚の葉から成る。その中で五七桐は花序の花数が5-7-5で、五三桐は花数が3-5-3となる。五三桐は庶民に普及した紋章であった。このほかにもさまざまな桐紋の意匠がある。

一方、北米南部では本来は花が好まれて庭園樹、街路樹などとして導入されたが、生育適応性や、発芽率が高いなどのため近年では本種は侵略的外来種とみなされている。

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No.8 ノウゼンカズラ

ノウゼンカズラ

科・属名

ノウゼンカズラ科  Bignoniaceae

ノウゼンカズラ属 Campsis

学名

Campis grandiflora (Thunb.) Loisel

英名

Chinese trumpet creeper、Chinese trumpet vine

和名の由来

漢名「凌霄」は古くは音読みで「のうせう(ショウ)かずら」と読まれていたが、次第に「のせう」が「のうぜん」に変じたもの。凌(音読みでりょう)は「しのぐ」の意、霄(音読みでしょう)は「空」「雲」の意で、つるが木に巻き付いて天空に高く伸びることに由来。

学名の由来

Campsis ギリシャ語、kampsisは曲がっているの意で雄しべの形が曲がっている事による。

Grandiflora 花が大きいの意。

木の特性

分布

中国原産。平安時代に渡来したと言われる。

形態

つる性落葉樹。耐寒性はない。

植物は丈夫で生長が早い。茎は長く伸び、生じた気根で、他のものに付着して這い上る。幹は太くなる。地下茎を伸ばし、周囲に広がる。

葉は奇数羽状複葉、対生、長さ3-7㎝、小葉は2-6対、小葉縁には荒いきょ歯がある。

夏、茎の先端に円錐花序を付ける。オレンジ色の花冠はロート状、大きさ6-7㎝、1日花。多量の蜜を生産する。鳥媒花。雄しべは4の内2が長い。雌しべ1の先端は大きく2裂。 果実は朔果だが日本では結実しにくい。

特性

花は月経異常,子宮出血、打撲傷に効果があり、茎葉、根は通経、利尿、湿疹、じんましんに効果がある。

ノウゼンカズラ

生薬

生薬名

紫威 神農本草経(中)は Campis grandiflora (Thunb.)Loiselで同じ

使用部分

採集時期・方法

夏、開花したばかりの花を採取し、日干し、または加熱乾燥する。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

紫威散(沈氏尊生書

薬性・薬味

酸,、微寒

応用・利用

行血・駆血・止血などの作用があり、血滞・月経不順・無月経・こしけ・腹内腫瘤・かゆみ・大小便不利などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

ノウゼンカズラは平安時代に中国から導入されている。古くから鑑賞用に植栽。

寿命が長く、樹齢400年以上と見られる株は秀吉が朝鮮半島から持ち帰ったとされ、今も金沢市内に残って居るらしい。

花は生薬として用いる。

花の香りを嗅ぐとめまいがし、蜜が有毒という迷信があり、人家に植えるのを嫌う。実際には無毒。

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No.9 キササゲ

キササゲ

科・属名

ノウゼンカズラ科 Bignoniaceae

キササゲ属 catalpa

学名

Catalpa ovata G. Don

英名

Japanese catalpa、Chinese catalpa、Yellow catalpa

和名の由来

葉が落ちても木に残って居る果実がササゲ(マメ科)に似るので「木」のササゲと呼ばれた。

学名の由来

Catalpa 南米の現地名。Ovata 葉の形が卵円形に基づく。

木の特性

分布

中国原産。

日本各地の河川敷、湿った場所に野生化している。

形態

落葉高木。

高さは10m、幹は太くなる。樹皮は褐色、若木では皮目が目立ち、成木では細かい割れ目が入る。

葉は大きく、3-5裂に浅く切れ目が入ったものから丸いものまであり、対生。葉柄の付け根や裏面の主脈にそって蜜腺が多数分布。

初夏、枝先に円錐花序をだし、花は淡黄色、花弁の内側に紫色の斑点がある。雄しべ5の内3は短くて不稔、雌しべ1。

果実は細長い朔果、花が終わると急に伸びて、果序から垂れ下がり、長さは30㎝。果実の中に長い毛を持つ扁平な種子が多数見られる。

種子は良く発芽する。

特性

成長は早く、寒さにも耐える。果実は、カタルポサイド、カタルポール、カタルパラクトン、αーラパコン、カタルパノン、βーシトステロール、p-ヒドロキシ安息香酸、クエン酸、脂肪油、を含む。カタルポサイドに強い利尿作用がある。

果実は腎炎、ネフローゼ、脚気に効果があり、根皮や樹皮は梓白皮と呼ばれ、中医方では解熱、駆虫、横断に用いる。

材は軽いので下駄、版木、器具類に利用される。

キササゲ2

生薬

生薬名

梓白皮 神農本草経(下)は キササゲCatalpa ovate G.Donで同じ

使用部分

樹皮、根皮

採集時期・方法

春・夏に根皮や樹皮を日干し乾燥。

色・味・香り

灰褐色。弱い匂いがあり、味はわずかに渋い

撰品

果柄の混入が少なく、あまり砕けなく、わずかに種子をあらわす程度に尖端が割れているものが良い。

主な薬用成分

果実 catalpoxide、根皮 isoferulic acid、sitosterol、樹皮 p-coumaric acid,ferulic acid

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

麻黄連しょう(車編に召)赤小豆湯(傷)

薬性・薬味

苦、寒

応用・利用

利尿・清熱・解毒・止痒の作用があり、むくみ・発熱・黄疸・皮膚のかゆみ・瘡疥などに民間薬として用いる。漢方処方には使用しない

その他

別名「雷電木」といわれ、雷よけの迷信から庭に植えられていた。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

公園樹、庭園樹として植栽される。果実は利尿剤になる。昔は弓を作り梓弓といったとも言われている。

若葉は食用になる。未熟な果実は薬用。

高木になり、水気を好むので避雷針代わりとして神社、仏閣、屋敷内に植えられた。

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No.10 クチナシ

クチナシ4

クチナシ3

科・属名

アカネ科  Rubiaceaee

クチナシ属 Gardenia

学名

Gardenia jasminoides Ellis

英名

Cape jasmine、Common gardenia

和名の由来

果実が熟しても割れない事から「口無し」

学名の由来

Gardenia  米人医師、博物学者A.Garden氏に因む

Jasminoides 花の香りがジャスミンに似る。

木の特性

分布

東アジア(中国、台湾、インドシナ半島)、日本(静岡以西の四国、九州、南西諸島)に自生。

野生では森林の低木として自生するが、園芸用に広く栽培される

形態

常緑低木。

葉は対生、時に3輪生、長だ円形で表面はつやがあり、葉脈が明瞭である。葉の基部には小さな托葉がある。

夏に咲く白い花には強い芳香があり、枝先に1個付く。花冠の基部は細く、先端は5-6裂し、平坦に開く。雄しべは6。雌しべ1の花柱はよく目立つ。八重咲きの花は結実しない。

子房下位の果実は長さ2㎝ほど,だ円形で先端に針状のがく片の名残が6本つきだし、側面に稜として残る。

特性

果実はモノテルペンのガルデノン、ガルデンジオール、イリドイド配糖体のガルデノシド、ゲニポシド、シャンチサイド、カロチノイドのクロマチン、ノナコサン、βーシトステロール、マンニトールを含む。果実の色素はクロセチン、クロチンである。花はジャスミン、ネロリに似た香りを有する。

花の精油の主成分は、ベンジルアセテートで、ほかにメチルフェニルカルビニルアセテート、リナロール、テルピネオール、リナリルアセテート、メチルアントラニレイト、モノテルペン配糖体の(R)-linalyl 6-O-α-L-arabinopyranosyl-β-D-glucopyranoside, bornyl-6-O-β-D-xylopyranosyl-β-D-xylopyranosyl-1-β-D-glucopyranosideを含む。

クチナシ5

クチナシ

生薬

生薬名

梔子  神農本草経(中)はGardenia jasminoides (Thunb.)Ellisで同じ

使用部分

果実

採集時期・方法

秋に熟した果実を陰干しで乾燥、採集後、熱湯に2~3分ほど漬けてから陰干してもよい。

色・味・香り

外面は黄褐色~黄赤色。果皮の内面は黄褐色。弱い匂いがあり、味は苦い。

撰品

小型の卵形で、内部の黄赤色のもの)

主な薬用成分

イリドイド配糖体(geniposide)、フラボノイド(gardenin)、黄色色素(crocin、rocetin)、脂肪油(種子に14~18%)、有機酸(caffeic acid)、糖類(mannitol)

公定書

日本薬局方 ―サンシシGARDENIAE FRUCTUS

         クチナシGardenia jasminoides Ellis(Rubiaceae)の果実

  局外生規  ―

  中共薬典  ―FRUCTUS GARDEAE

   茜草科植物 梔子Gardenia jasminoides (Thunb.)Ellis的

         干燥成熟果実

漢方例

黄連解毒湯(外台秘要)、清上防風湯(万病回春)、茵陳蒿湯(傷・金)

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

消炎・利尿・止血・利胆・鎮静作用があり、充血・吐血・煩躁・黄疸・炎症・高血圧などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹に利用される。花は香りがよく、花は最初は白色で, 日が経過するにつれ黄変する。

花を三杯酢にして食べたり、乾燥させて茶に入れて香りをつける。果実を薬用とし、また,果実にカロチノイドの1種、クロシンが含まれ、乾燥させてきんとん、たくあん漬けなど食品の着色料に用いる。

発酵させると青色の染料にもなる。草木染にも用いる。

果実の水抽出物を打撲傷、捻挫に外用する。

クチナシの色素とカチオン系界面活性剤と組み合わせによる毛染め剤が考案されている。

クチナシ属の黄色色素の毒性はネズミを用いた試験で、発がん性等は認められず、安全であることが示されている。葉はオオスカシバの幼虫の食樹、イワカワシジミの幼虫はクチナシのつぼみや果実を餌とする。

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No.11 ハチク

ハチク1

ハチク3

科・属名

イネ科 Gramineae

マダケ属 Phyllostachyse

学名

Phyllostachys nigra (Lodd.) Munro var. henonis (Bean) Stapf.P.henonis Bean

英名

Henon bamboo

和名の由来

ハチクは[破竹]、即ち本種を割るときに最初の一節を割るとそのあとは一気に割れるため。古代中国の晋書の中の語に基づく。

学名の由来

Phyllosstachysはギリシャ語でphyllon 葉、stachys穂の意で包葉に包まれた花穂の様子に基づく。Nigra 黒い

木の特性

分布

中国原産。黄河流域の南部に分布

日本では北海道以南で栽培、野生化。モウソウチクより耐寒性があるので日本海側に多い。産地で野生化したものも多い。

形態

稈の直径は10㎝、高さ15mになる。

節の輪は2、節間は20-40㎝。若い茎には白粉が表面を被い、各節から枝が2本出る。

皮は紫色、先端にびん毛がある。

花は早春に竹やぶ全体で一斉に開花するが、殆ど結実しない。開花後数ヶ月で地下茎と稈が立ち枯れするが、開花した個体で茎の数節の芽が残り、秋までに葉を付け、30㎝ほどに生育し、次の年の再生竹は葉をつけて生き残る。タケは種子では無く、栄養繁殖により次世代を残す。竹は木でも草でもない。

木は原則として維管束形成層による二次的肥大成長を行うことができるが草にはそのような性質はない。

特性

トリテルペンのグルチノール、グルチノン、フリーデリン、エピフリーデリンを含む。

ほかに、ビタミンK を含む。本種はモウソウチク、マダケについで各地で栽培される。耐寒性があるため日本海側に多い。各地の山地で野生化している。

ハチク2

マダケ・モウソウチク

生薬

生薬名

竹葉 神農本草経(中)は クチク(苦竹)Pleioblastus amarus (Keng)Keng fil.

使用部分

採集時期・方法

生葉の葉の先と葉脚部分を5分ぐらいを釧刀で切り、すぐに煎じ薬に入れる。

撰品

新鮮なもの

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―竹ジョ Bambusa tuldoides Munro

           ハキク Phyllostachys nigra Munro

                 var.henonis Staph et Rendle

           マダケ P.bambusoides  Sieb. et Zucc.  

                 のカンの内層

  中共薬典  ―

漢方例

竹葉石膏湯(傷)、麦門冬飲子(宣明論)

薬性・薬味

苦、平

応用・利用

清熱・除煩・利水の作用があり、煩熱・口渇・などを改善する薬方に配合される。

その他

薬用部位としては葉以外に皮じょ(竹の幹の堅い上皮を薄く剥ぎ去り、内皮を薄く削った部分・清熱、去痰)・筍(タケノコ)・根茎・汁(葉を絞って作る・清熱)・実・瀝(竹の稈を火の上に置いて切り口から出てきた液体・去痰薬)などがある

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

クレチク、カラダケともいう。日本名は白竹との説もある。クロチク、ゴマダケはハチクの変種。

枝が細くきれいなので竹ぼうきとして好まれる。正倉院御物の中にある笙、尺八、筆などはハチクで作成されている。

稈は細く割りやすいので、茶筅(ちゃせん)に利用される。茶筅などの茶道具、竹竿、尺八などの材料に古くはハチクが使われた。枝葉が細かいので見た目が美しく庭園樹に用いられる。竹をあぶって出てきた液汁を凝固させたものを薬用に用いる。葉も薬用。竹の皮を黒焼きにしたものがマラリアに効果がある。

この種のタケノコは食用で、3月-5月までが旬。

採取時にはあくがなく、生食しても美味。マダケに似るが、生える時機が早く、竹皮に黒点模様がない。

稈の内側の薄皮は竹紙と呼ばれ、笛の響孔に張り音の響きを良くする。

漢方薬にも使われる。

タケの寿命はおおよそ100年程度、人の年齢の10倍がタケの年齢とされ、地下茎からは2年(人の20歳)でタケノコが出る。

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No.12 シダレヤナギ

シダレヤナギ

科・属名

ヤナギ科 Saalicaceae

ヤナギ属 Sarix

学名

Salix babylonica L.

英名

Weeping willow、Babylon willow

和名の由来

中国ではこの樹で矢を作ったので、「矢ノ木」と言われた。これは「ヤナギ」へと変わったもの。

学名の由来

Salix ケルト語でsal 近い + lis 水 が語源。水辺に多いことから付けられた。

ラテン語でsalire 跳ぶが語源だとの説もあり、生長が早いことによる。

Baylonica 地名、バビロニアの。現在のイラク、古代メソポタミアの南部を占める地域がバビロニア。

木の特性

分布

中国原産。湿地に生育。

奈良時代に日本に渡来。街路樹として日本各地に植栽。

シルクロードによって南西アジア、ヨーロッパに伝えられた。

川辺、湿地を好む。

形態

落葉高木。雌雄異株。

太い幹は直立するが、細い側枝は枝垂れる。樹皮は灰白色、縦に割れ目が生じる。

葉は線形で細く先が尖り、長さ10㎝前後、葉縁には細かいきょ歯があり、葉の裏面は帯白色。

虫媒花。尾状花序。早春に葉と同時かそれより早く咲く。黄緑色の花の基部には小さい葉が数枚ある。雄花序は4㎝ほど、雌花序はそれより短い。雄花の雄しべは2で葯が黄色い。雌花の雌しべ1の柱頭は2裂し、花柱は短い。

果実は朔果、5月頃に熟し、種子には長い綿毛がある。種子は風で散布され、アレルギーになりやすいため街路樹には雌株を避けるので、雌株は少ない。

特性

成分にサリシンを含む。サリシンは体内で変化し、サリチル酸になる。

サリチル酸には解熱作用、局所刺激作用、殺菌作用、血圧降下作用、鎮痛などの作用がある。解熱鎮痛薬のアスピリンはサリシンの作用を基に考案されている。

辺材は白色~黄白色、心材は淡黄褐色~紅褐色で、組織が均一で軟らく、軽く割りやすい

生薬

生薬名

柳華 神農本草経(下)は Salix babylonica L.で同じ

使用部分

採集時期・方法

花を突き汁にするか、磨って粉末にする。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

去風・利湿・止血・駆お血作用があり、黄疸・咳血・血便・血尿・無月経・歯痛を改善する薬方に用いられる。

その他

現在は花よりも枝や樹皮が薬用につかわれている。柳枝の薬性は苦寒。 利尿・鎮痛作用があり、風邪や腫脹を治す。アスピリン(アセチルサリチル酸)が開発された。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

水辺に近いところに育つが、それ以外のところでもよく育ち、枝を垂れ下げた樹形が美しいので街路樹や風致樹として用いられる。

枝葉の形からイトヤナギとも呼ばれる。

軽く、色が比較的薄いので、まな板、張り板、製図版、木魚彫刻材、五番、下駄、マッチ軸木、楊枝などに利用される。材が軟らかいので、箱材にすれば衝撃を緩和するので、輸送用箱材に適していて、壊れやすいものや火薬などの輸送に用いられる。パルプ材としても利用される。炭化すると均一で軟らかい木炭となるので、桐炭同様、絵画用、漆器の研磨用、火薬用に用いられる。

落葉高木。雌雄異株。

太い幹は直立するが、細い側枝は枝垂れる。樹皮は灰白色、縦に割れ目が生じる。

葉は線形で細く先が尖り、長さ10㎝前後、葉縁には細かいきょ歯があり、葉の裏面は帯白色。

虫媒花。尾状花序。早春に葉と同時かそれより早く咲く。黄緑色の花の基部には小さい葉が数枚ある。雄花序は4㎝ほど、雌花序はそれより短い。雄花の雄しべは2で葯が黄色い。雌花の雌しべ1の柱頭は2裂し、花柱は短い。

果実は朔果、5月頃に熟し、種子には長い綿毛がある。種子は風で散布され、アレルギーになりやすいため街路樹には雌株を避けるので、雌株は少ない。

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No.13 アキニレ

アキニレ

科・属名

ニレ科 Ulmaceae

ニレ属 Ulmus

学名

Ulmus parvifolia jacquin

英名

Chinese elm,Lace bark elm

和名の由来

日本産ニレ属で唯一秋に開花することため。

ニレは韓国語の「ヌルム」が変化した。

学名の由来

Ulm ケルト語のニレに由来。Parvifolia 葉の形が小さいの意。

木の特性

分布

本州中部以西、四国、九州、に自生。大気汚染に強いため広く植栽される。

形態

落葉高木。

樹皮は灰褐色、若い木には小さな皮目があり、古くなると樹皮がりん片状に剥がれてまだら文様になる。剥がれた跡には皮目が目立つ。 葉は長さ5㎝ほど、光沢があり、表面がざらついて堅い。葉縁には鈍きょ歯がある。葉にむしこぶをつくる。

9月頃に淡黄色の両生花を付ける。雄しべは4、葯は大きい。雌しべ1,柱頭は2裂する。

果実は長さ1㎝程度、翼があり、風散布される。

1個の翼果には種子が1個あり、葉が落ちてもまだ冬になるまで落ちないが、春近くには殆ど散布される。

種子の発芽率は高いが、初期発生が遅いので競合する植物のいない痩せ地でしか定着できない。

川原、石灰岩地域、痩せ尾根に生育する。

根が良く発達するので、これらの乾燥地帯でも生育できる。川原は水はけが良く冠水時以外の環境は乾燥地となる。

特性

樹皮はタンニン、でんぷん、スティグマステロール、シトステロール、マンソノンC,G,7-ヒドロキシカダレナール、3-メトキシー7-ヒdロキシカダレナールを含む。葉はイソケルセチン、ルチンを含む。

材の気乾比重は0.54~0.90で材としては硬い部類に属する。

アキニレ2

生薬

生薬名

楡皮 神農本草経(上)はノニレUlmus pumila L.

使用部分

樹皮

採集時期・方法

春に幹或いは根の皮をはぎとり日干しする。

主な薬用成分

タンニン

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

甘、平

応用・利用

利尿(排尿困難)、背中のできもの(腫瘍)

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

カワラゲヤキ、イシゲヤキ、ニレ、ネリともいう。公園、庭園、街路樹として利用。材は堅いので、家具、戸棚、ベニヤ板、床材、野球のバット、器具材、車両材として利用。 民間で、樹皮と葉を薬用にする。

樹皮は煎汁が利尿、鎮痛に効果がある。歯の痛みには生葉を煎じて少量の酢を加えたものでうがいすると 効果がある。また、できものには葉を砕いて出てきた汁を患部に塗布するとよい。

樹液が豊富で、カブトムシ、クワガタムシなどが好む。

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No.14 ハルニレ

ハルニレ6

ハルニレ5

科・属名

ニレ科 Ulmaceae

ニレ属 Ulmus

学名

Ulmus davidiana Planch var. japonica (Rehder) Nakai

英名

Japanese elm

和名の由来

春に花が咲くのでハルニレといい、ニレは「滑れ」の意味で、樹皮の内側がぬるぬるするから。「ニレ」は韓国語の「ヌルム」が変化してニレとの説もある。

学名の由来

Ulmus ケルト語のニレの意。種小名のdavidianaはA.ダビッドを記念して命名。Japonica 日本の。

木の特性

分布

北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に自生。

生育地は高山など冷涼な地が多い。湿潤で肥沃な土地を好む。氾濫原や河川沿いに林をつくる。

形態

落葉高木。

樹冠はほぼ円形、樹皮は暗灰褐色、縦に不規則な裂け目がある。若い枝は有毛、後に無毛となり、時にはコルク質の翼を生じる。

葉は互生、だ円形、基部は左右不等。葉縁は二重きょ歯。裏面の葉脈にそって有毛。葉にアブラムシなどのムシこぶをつくる。秋に赤色に紅葉する。

早春、葉に先立って前年枝に7-15個の小さな両生花を束生する。花被から突き出た赤い葯が目立つ。雄しべは4、雌しべ1で花柱は2裂する。

5月ごろに黄緑色の翼果を生じる。果実は両面無毛、数ミリほど、先端にくぼみがある。

特性

樹皮はタンニン、ガム質を含み粘性に富む。葉は硫酸バリウム、実は脂肪に富む。材からオルソキノンのマンソノンE,F,H,I 及び、davidianone A, B, C を含む。Davidianone A , C, マンソノン F に抗酸化作用があり、マンソノン F が最も活性が強い。

辺材、心材の境は明瞭で辺材は帯褐灰白色、心材は褐色である。材の比重は0.42~0,71で、硬さは中庸からやや重硬。

ハルニレ3

生薬

生薬名

蕪夷 神農本草経(中)はチョウセンニレ Ulmus macrocarpa Hance, コブニレ, ハルニレ Ulmus davidiana planch var. japonica(Rheder)Nak.

使用部分

果実

採集時期・方法

夏に果実を採取し、発酵加工したもの。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦辛、温

応用・利用

殺虫・消積の作用を持ち、回虫・条虫による腹痛・小児の肝癪・皮膚病を改善する薬方に配合する。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

アカダモ、コブニレ、ヤニレともいう。公園樹、街路樹として利用。材は建築材、器具材(お椀、盆)、楽器材(太鼓の胴)、枕木、臼・杵(きね)、べニアとしての室内内装材、新炭材、シイタケほだ木などとして利用。

樹皮は繊維をとって、布、縄に利用されていた。樹皮と根の粘着物質は和紙を漉くときの糊として利用し、樹皮を細かく砕き粉にして練ったものを楡麺(にれめん)といい、瓦や石を並べつなぐ時の接着剤に使われていた。

ハルニレはまた、方言でニレ、ネレ、ネリなどとも呼ばれている。これは樹皮をはがすとぬるぬるすることによるもので、この粘液を和紙を作るときの糊に使用していた。

ニレの呼び名はヤニヌレが縮まったことによる。 万葉集の長歌に出てくる「モルニレ」はハルニレの内皮をはがして乾かして臼でついて食料としたもので、ハルニレは貧しい人の食べ物でもあった。アイヌの人たちの間には、雷神が美しいハルニレ姫の上に落ちて生まれたのが人間の祖先のアイヌラックルであるとの伝説がある。

ニレの木は堅く、こすると着火しやすいことからニレの木から火を得ると言い伝えられている。

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No.15 トチュウ

トチュウ

科・属名

トチュウ科 Euconomiaceae

トチュウ属 Euconomia

学名

Eucommia ulmoides Oliver

英名

Gutta-percha tree Chinese rubber tree

和名の由来

漢名の「杜仲」(トチュウ)を用いた。

古代中国で「杜仲」と言う人が樹皮を煎じて飲んだところ仙人の悟りを開いた故事に因む。

学名の由来

Eucommia Eu 良い + komi ゴム  樹脂がゴム状であることから。

Ulmoides ニレに似ているを意味する。

木の特性

分布

中国原産。中国南部、長江中流域に分布するが現在では野生するのは希。

日本には大正7年(1918)に渡来。

6000万年前の化石は中央ヨーロッパ、北米から発見されており、恐らく分布は世界に広がっていたと見られるが、現在では中国に自生するのみ。栽培は世界各地で行われている。

形態

落葉高木。雌雄異株。

樹高は20m、樹皮は暗褐色。樹皮、枝、葉は折ると銀白色の糸を引く。

葉はニレやケヤキに似る長だ円形、先端と基部が尖る。葉柄は長く、葉縁は細きょ歯があり、若い葉の両面は有毛、古くなると裏面のみに残る。

春、花は葉に先立って枝の先端部に咲く。花被はなく、全体が緑色。雄花は雄しべ8-16、花糸は短い。雌花は雌しべ1のみ、花柱はなく、柱頭は2裂して下方を向く。

秋に生じる翼果は淡緑色、長だ円形、3-4㎝ほど、翼の先端は凹む。種子を1個含む。

特性

樹皮にイソプレン重合体のグッタペルカを2~6.5%、オークビン、精油を含む。

1科、1属、1種でAPG分類体系ではガリア目(Garryales)に分類される。

化石が北米、中央ヨーロッパで見つかっており、6000万年前には各地に分布していたが、現在では中国で確認されるのみである。

トチュウ2

生薬

生薬名

杜仲 神農本草経(上)はEucommia ulmoides Oliverで同じ

使用部分

樹皮

採集時期・方法

4~6月に幹皮を剥いで乾燥。粗皮を削り去り、汗をかいて紫褐色になるまで、重ねて放置。

色・味・香り

外面 淡灰褐色~灰褐色。内面 暗褐色~褐色。わずかに特異なにおいがあり、味はわずかに甘い。

撰品

肥大して厚く、折ると良く白糸を引くもの。

主な薬用成分

gutta-percha geniposide cyclic olivil、olivil

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―杜仲科植物 杜仲Eucommia ulmoides Oliv. 的乾燥樹皮

漢方例

大防風湯(万病回春)、補陰湯(万病回春)

薬性・薬味

辛、平

応用・利用

強壮・強精・鎮痛作用を持ち、神経痛・筋肉痛・関節痛・足膝軟弱・高血圧・流産防止・インポテンツ・頻尿などを改善する薬方に用いられる。

その他

1990年頃からトチュウの葉が健康茶として売り出され、杜仲茶の名が知られるようになった。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

若葉を杜仲茶として飲用。民間では樹皮を煎じて強壮剤として用いていた。樹皮や葉にはゴムの原料となるグッタペルカが樹皮に7%、 葉に約2%含まれている。グッタペルカはグッタペルカの木から採取される乳液を乾燥したもので、その主成分は、ゴムの木からの乳液と同じように、イソプレン重合体である。グッダベルカは、酸、アルカリ、塩類に強く、化学薬品、医療機器、水中機器、宇宙機器など広く絶縁材料などに用いられる。

マレーシヤ原産でアカテツ科のグッタベルカノキからは大量のグッタペルカが採取される。温帯産のトチュウは採取することが出来る唯一の植物であるが。収量は少ない。

中国では5000年以上前から漢方薬として重要な「幻の薬木」、仙木とされた。19世紀になって初めて西欧に紹介された。樹葉は15年以上生育しないと採取出来ないので薬用人参より貴重品で薬用として別格の扱いをされた。

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No.16 ヤマグワ

ヤマグワ

科・属名

クワ科 Moraceae

クワ属 Morus

学名

Morus australis poir.

英名

Japanese mulberry,Chinese Mulberry

和名の由来

山に生えるクワの意。旧仮名遣いの「クハ」はカイコが葉を食うことから「食葉」(くは)、あるいは「蚕葉」(こは)に由来。

学名の由来

属名はケルト語でクワを意味する。あるいは、Morus ケルト語の「黒」の意。果実の色に由来。種小名のAustralis 「南の」の意。

木の特性

分布

北海道から九州、南樺太、朝鮮半島、ベトナム、ミャンマー、ヒマラヤに分布する。

形態

落葉高木。

雌雄異株または同株。雌雄異花。樹皮は灰褐色、縦に筋がはいり、薄く剥がれる。葉は薄く、基部から3本の主脈が出る。葉縁には荒いきょ歯がある。若木では葉に大きな切れ込みが入るが、古木では心形となる。

春、当年枝に花序を付ける。雄花は茎の先端に尾状花序を付ける。がく片は緑色、雄しべは4、花糸は緑色、葯は黄色。

雌花は枝の基部に付き、球形。がく片は暗緑色、花柱は1で長く、柱頭は2裂する。

果実は複合果、5月頃に熟し、赤紫色となる、サイズは1㎝程度。熟すと甘くて美味しい。

特性

根皮はモルシン(プレニルフラボノイド)、クワノン A~T、ムルベロフラン A~K (ベンゾフラン誘導体)、ムルベロサイド A~C(配糖体)を含む。

辺材は淡黄白色、心材は暗黄褐色で、木理は粗で、硬く重い。

狂いが少なく強靭であり、加工が容易。桑は生長が早いが中が空洞に成ったものが多い。

桑の材質は堅く、磨くと深黄色になることで工芸品に使われる。年輪が緻密で木目が美しいが良材は少ない。

古くから弦楽器の材料とされ、正倉院には桑製の楽器として枇杷、撥弦楽器の阮咸(げんかん)等が保存されており、江戸指物にも使われ、高齢者の用いる杖の素材とされた。

生薬

生薬名

桑根白皮 神農本草経(中)は マグワ Morus alba L. ヤマグワ Morus australis Poir. で同じ

使用部分

根皮

採集時期・方法

春と秋に根を取り、水洗いして、乾燥しないうちに外皮をはぎとり、日干しにする。

色・味・香り

外面は白色~黄褐色を呈し、周皮を付けたものは周皮が黄褐色ではがれやすく、赤褐色ので横長の皮目が多数ある。内面は暗黄褐色。わずかににおい及び味がある。

撰品

外面紫色をおび、内面白色で柔らかく、皮の薄いもの。

主な薬用成分

トリテルペノイド(amyrin betulinic acid), フラボノイド(morusin),ステロール類(sitosterol), 脂肪酸

公定書

日本薬局方 ―ソウハクヒ MORI CORTEX

         マグワ Morus alba Linne(Moraceae)の根皮である。

  局外生規:―

  中共薬典  ―

漢方例

五虎湯(万病回春)、分心気飲(和剤局方)

薬性・薬味

甘、寒

応用・利用

日本の民間療法には果実<桑椹>利尿・強壮作用があり、低血圧症 不眠症  冷え症に効果があり、 桑椹酒として愛飲される。 葉は中風・高血圧に御茶代わりに飲む。

桑白皮は鎮咳・解熱・利尿・消腫の作用があり、気管支炎・喘咳・浮腫・排尿減少などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

ヤマグワは、わが国で最も一般的なくクワの種類。葉を養蚕に用いる。

桑はクワ属の総称、カイコの餌として重要な作物であった。材は建築材、器具材として利用。樹皮は和紙の原料。果実を生食する。桑の実は甘く美味しいが、ガの幼虫が好み、幼虫の体毛が抜け落ちて付着するので生食する場合には良く水洗いした方が良い。

を煎じてお茶として飲むと補血、強壮に効果がある。枝は炒ってからお茶として飲むと中風、動脈硬化の予防になる。果実は酒につけ果実酒として飲めば、低血圧症、不眠症に効果がある。皮は繊維質なので東南アジアの国では布を作り、また、紙やロープの原料とにもしている。

わが国では靭皮繊維を和紙の原料としていた。建築材のほか、お椀や碁笥(ごけ)などの器具材としても利用される。

柱、床板、箪笥、その他の家具、器具材として利用される。樹皮の煎汁は草木染に利用され、布を黄色に染めるのに使われる。樹皮のあまかわは焼酎に漬け桑酒とする。

養蚕用のクワの葉は古くは野山に自生するものを使用していたが、江戸時代中期以降に養蚕が振興されて畑にクワを栽培するようになった。葉は管理が行き届いていれば15~20年は収穫可能である。

桑はわが国では古くから栽培され、養蚕に使われてきた。日本書紀には5世紀後半に諸国にクワを植栽することが命じられたことが記載されている。8世紀初めにつくられた律令では、百姓の戸ごとにクワとウルシを植栽することを義務付けている。

クワは雷除けの木とも考えられ、雷が鳴ると「くわばら、くわばら」と唱える風習があり、雷が鳴りだすとクワの葉を頭に載せたり、家の入口や窓に挿すと、雷が落ちないとの言い伝えがある地域がある。「くわばら、くわばら」の語の由来には各地で諸説がある。クワバラは漢字では「桑原」となる。

和泉市桑原町の西福寺に「雷井戸」と呼ばれる井戸があるが、この井戸に落雷した時に蓋をしたら雷が「もう桑原に落ちないから逃がしてくれ」と約束したという説。

宮崎県福島村で雷がクワの木に落ちた時に、雷が怪我をして以来、雷は桑畑に落ちないようになったという説。

沖縄県では雷がクワの又に挟まれて消えたため雷が鳴ると「桑の又」と唱えて雷を避けるようになったという説。

養蚕の発祥の地、中国ではクワは神木であった。それにまつわる神話伝説が数多く残されている。

古代中国の書物「山海経」の中で扶桑という巨大な神木があり、そこから10個の太陽が昇るとされていた。ゲイ(げい)と呼ばれる射手がこの中の太陽9個を打ち抜き1個だけにしたことから天と地が安定したという。

古代日本で桑弓は男子が産まれたときに将来の厄払いのため家の四方に向かって桑の弓で蓬の矢を射た。この起源は古代中国文明圏に模して、男子の立身出世を願うための一種の通過儀礼で、これが日本に伝えられて男子の厄除けの神事となった。この時使われる弓は桑の木でつくり、蓬(よもぎ)の葉を矢羽としたものであった。

日本でもクワには霊力があるとみなされ、箸や杖が中風(脳血管障害)を防ぐとされた。鎌倉時代の「喫茶養生記」には「クワは仙薬の中で最上のもの」と記されている。

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No.17 コブシ

コブシ

科・属名

モクレン科 Magnoliaceae

モクレン属 Magnolia

学名

Magnolia praecocissima Kodz.;Magnolia kobus auct.non DC.;Magnolia kobus DC.;

英名

Thurber's magnolia、Kobushi magnolia

和名の由来

集合果の形状が人のにぎりこぶし状であることから。

学名の由来

Magnolia フランス、モンペリエ大植物学教授Magnol氏に因む。Kobus 和名に因む。「コブシ」は集合果の形を拳に見立てた。(Praeoccissima 花が早く咲くの意)。

木の特性

分布

日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国済州島に自生。

形態

落葉高木。

樹皮は灰褐色で平滑。皮目がある。

葉は倒卵形、10㎝程度。葉の裏面は淡緑色。噛むと辛みがある。

早春、葉の展開前に、枝先に8㎝くらいの純白の花を咲かせる。花の基部に小さな葉をつけるので、タムシバと区別する。花弁とがく片の区別があり、がく片3は小さい。花べんは6、基部は紅色を帯びる。雄しべは多数。雌しべも多数。

花の終わったあとに花床が伸長し、袋果のあつまる曲がった集合果になる。長さ10㎝程度。種子は赤色、秋に熟すと袋果がさけ、種子は珠柄の維管束の白い糸で袋果本体からぶら下がる。

特性

樹皮、枝葉は精油を0.4~0.8%程度含み、コブシ油と呼ばれるが、現在は営業的な採取は行われてはいない。

その成分は、シトラール、αーピネン、シネオールなどのモノテルペン類、及びフェノール類のオイゲノールなどである。

また、白い花はフラボン系色素ルチンを含む。

材は辺心材ともに灰黄白色で軽く、柔らかく緻密で狂いが少ない。

コブシ3

生薬

生薬名

辛夷 神農本草経(上)は Magnolia kobus auct.で同じ

使用部分

採集時期・方法

冬末春初め 花がまだ開かない3月頃 、開花前の蕾を採取し、枝梗を除いて日陰で乾燥する。

色・味・香り

外面は黄緑色の長い柔らかい毛で密に被われ、内面は紫褐色。独特の香りがあり、味は辛涼で少し苦い。

撰品

灰褐色絹様の光沢ある毛を密生し、蕾が開かず、花柄の少ないもので、くだけば、芳香を発する乾燥した新鮮なもの。

主な薬用成分

精油(citral、eugenol,cineol、cinnamic aldehyde), アルカロイド(coclaurine), 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規  ―辛夷 タムシバMagnolia salociifolia Max.

           コブシM. kobus De candolle

              M.biondii Pampanini 

              又はその近縁植物のつぼみ

 中共薬典  木蘭科植物 望春花 M.biondii Pamp.

             玉蘭 M.dendata Desr.

         武当玉蘭  M.sprengeri Pamp.

           的乾燥花蕾

漢方例

辛夷清肺湯(外科正宗)、葛根湯加川きゅう辛夷(修琴堂方)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

発汗・鼻の孔を通じる要薬として、鼻づまり・鼻炎・蓄膿症・風邪による頭痛などに用いられる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

公園樹、庭園樹、街路樹などとして植栽され、大輪の白い花をつける。花は葉が開く前に咲き、無数の白い花で木が飾られる。コブシの花が咲いたのを目安に農作業を始める地方が多く、田打ち桜と呼ばれたりする。

「桜」の名が付くのは山中で遠くから見ると桜にも見えることによる。

樹皮が薬用となる。花蕾の水抽出物に骨格筋収縮作用、降圧、抗菌作用、興奮発散作用、鎮静作用がある。皮付きの丸太のまま床柱に利用され、また、まな板、製図版、楽器、下駄、彫刻材、版木、鉛筆材、塗り物木地、ろくろ細工に用いられる。炭は軟らかいので桐炭同様、金銀の研磨用に用いられる。

樹皮は煎じて茶の代わりに飲む。

民間薬の風邪薬にも使われる。

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No.18 モクレン

モクレン

科・属名

モクレン科 Magnoliaceae

モクレン属 Magnolia

学名

Magnolia liliiflora Desr

英名

Lily tree, Lily Magnolia, Mulan magnolia, Purple magnolia,Red magnolia, Lily magnolia,Tulip magnolia, Woody-orchid

和名の由来

[木蓮 ](もくれん)は花がハスに似ることによる。

学名の由来

Magnolia Magnol氏に因む。Liliflora ユリ属の花に似ることによる。

木の特性

分布

中国南西部、四川省、雲南省に自生。

原産地では標高300mから1600mに生育している。

形態

落葉小高木。樹高5m程度、他のモクレン属より小形である。樹皮は灰白色、平滑。

葉は互生、広卵形で長さ10㎝。

濃紫色の花は枝先に付き、葉の出る前に上向きに半開する。がく片3は小さくて細い。花弁は6で長い。多数の雄しべと雌しべが、らせん状に付く。 花後、花床が伸びて集合果をつくる。果実は上むきに付く。

袋果が裂開して赤色の種子が珠柄の維管束で吊り下がる。

特性

花蕾にαーピネン、シネオール、オイゲノールなどの精油成分、カプリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、微量のアルカロイドを含む。

花蕾の水抽出物には骨格筋収縮作用がある。煎汁には病原性皮膚真菌類に抗菌作用がある。

ハクモクレン

生薬

生薬名

木蘭 神農本草経(上)はモクレン(木蘭)Magnolia liliiflora Desrで同じ

使用部分

樹皮

主な薬用成分

タンニン

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、寒

応用・利用

モクレンの蕾も辛夷として使用される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

観賞用花木として庭園、公園に植栽されている。白い花をつけるハクモクレンに対して、紫の大輪の花をつけるモクレンはシモクレン(中国名:紫玉蘭)とも呼ばれる。

中国各地や日本に植栽され、日本から英語圏に紹介されたことからJapanese Magnolia と呼ばれることがある。現在は北米でも鑑賞樹とされている。

地球上で最古の花木とされ、1億年前から同じ形状であった。

化粧品、香料などに使われる。

日本への渡来は古く、主に薬用とされた。

蕾みを生薬とする。

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No.19 ホオノキ

ホオノキ

科・属名

モクレン科 Magnoliaceae

モクレン属 Magnolia

学名

Magnolia obovata Thunb.

英名

Japanese big leaved Magnolia、Japanese  Whitebark Magnolia

和名の由来

万葉の時代には「ホオガシワ」と呼ばれていた。ホホとは冬芽の「ほほむ」(包まれる形)に由来。カシワは「炊ぐ葉」(かしぐは)で、古来より食べ物をのせる葉を指す。

学名の由来

Magnolia  フランス、モンペリエ大の植物学者Magnol氏に因む Obovata 倒卵形を意味する。

木の特性

分布

日本全土の亜高山帯以下の標高の山地、千島列島に自生。

形態

落葉高木。

樹枝は灰白色、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20㎝以上、葉柄は4㎝程度で葉の大きさに比べて短い。倒卵形で表面は緑色、裏面は白粉をふき、互生して枝先に束生するので輪生に見える。

6月ころに枝先に白い大きな花を付け、上に向かって開花。花被片は多数あり、らせん状に配列する。がく片と花弁の区別は無い。雄しべ、雌しべは多数、花床にらせん状に配列。 果実は袋果で、各果には1-2個の種子ができる。

特性

樹皮にセスキテルペンのαー、βー、γーオイデスモール、セリネノール、リグナン類のマグノロール、ホオノキオール、アルカロイドのマグノクラリン、マグノフロリン、リリオデニン、アノナインを含む。

マグノフロリン、マグノクラリンに骨格筋弛緩作用、アドレナリン増強作用が認められている。

エーテル抽出物に中枢抑制作用、筋弛緩作用がある。

辺材は灰白色ないし黄灰色、心材は暗灰緑色~暗緑褐色。気乾比重約0.5で、やや軽く軟らかい。加工性がよい。

ホオノキ2

生薬

生薬名

厚朴 神農本草経(中)は Magnolia officinalis Rehder et Wilsonで同じ

使用部分

樹皮

採集時期・方法

夏に樹皮を剥ぎ乾燥。

色・味・香り

外面 灰白色~灰褐色。内面は淡褐色~暗紫褐色。弱い匂いがあり、味は苦い。

撰品

新鮮で厚みがあり、充実して堅くなく、香が良く、味が苦く辛いもの。

主な薬用成分

精油(eudesmol pinene),アルカロイド(magnocurarine), ジフエニル化合物(magnolol honokio-l)

公定書

日本薬局方  コウボク MAGNOLIAE CORTEX

       ホウノキ Magnolia obovata Thunberg. 

       M.officinalis Rehder et Wilson

       又はM.officinalis Rehder et Wilson var.biloba

       Rehder et Wilson (Magnoliaceae)の樹皮

 局外生規  ―

 中共薬典  厚朴CORTEX MAGNOLIAE

       木蘭科植物厚朴Magnolia officinalis Rehder et Wilson 或

       凹葉厚朴M.officinalis Rehder et Wilson var.biloba

       Rehder et Wilson 的樹皮

       厚朴花FLOS M.OFFICINALIS(上記厚朴の花)

漢方例

半夏厚朴湯(金)、小承気湯(傷・金)

薬性・薬味

苦、温

応用・利用

健胃・消化・整腸・収斂・鎮静・去痰・利尿の作用があり、腹部膨満感・消化不良・気鬱・などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

材は加工性がよいので、建築造作材、家具、細工物、彫刻材、朴歯下駄、器具材として利用される。水に強く手触りも良いのでまな板、樹脂などが少ないので日本刀の鞘などに用いられた。木炭は金銀や漆器の研磨に使われる。

大輪の白い花を咲かせ、香りもよく、公園樹、庭園樹として好まれる。樹皮が薬用になる。葉は芳香があり、殺菌作用もあり、端午の節句にホオノキの葉で包む柏餅などのように大きなホオノキの葉はものを包むのに使われる。

食材を包んで朴葉寿司、朴葉餅、朴葉にぎりなどとし、火にも強く味噌で肉や野菜を混ぜて調理する朴葉味噌などの器に使う。

万葉集の「わが背子が捧げて持てるほほがしはあたかも似るか青き蓋(きぬがさ)」の歌のように日傘の代わりに使うのもホオノキの葉が大きい故である。

樹皮は生薬の和厚朴として知られているが、果実は民間薬として風邪、嘔吐などに用いられていた。

樹皮は漢方薬に使われる。

強い他感作用(Allelopathy)を示すため樹冠の下に他の植物が生えにくい。落ち葉や根から分泌される他感物質によって発芽や生育が阻害される事による。そのため、樹冠の下には下草が少ない。

ホウノキの花は雄しべと雌しべの成熟時機をずらす事で自家受粉を避ける仕組みがあるが、沢山の花の中では成熟時機が同じものがあり、自家受粉することがある。自家受粉では受精後の生育も劣り、結実も良くない事が示されている。

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No.20 チョウセンゴミシ

チョウセンゴミシ1

科・属名

マツブサ科 Schisandraceae

マツブサ属 Schisandra

学名

Schisandra chinensis Baillon

英名

Five flavour berry

和名の由来

江戸時代享保年間に薬用植物として朝鮮から伝えられたことと、五味子は果実に、甘、酸、辛、苦、塩の五味があることによる。

学名の由来

Schisandra schiza (離れる)+ andra(雄しべ)(雌雄異株で)Chinensis 中国の。

木の特性

分布

日本(北海道、本州北部)、中国、朝鮮半島、ロシアのアムール川流域、樺太に分布。<詳しく見る>

形態

落葉性つる植物。

雌雄異株または雑居性。

つる性の茎は1㎝程度で太くならない。特別のよじ登り器官(吸盤、巻きひげ)を持たず茎で巻き付くが樹冠まで届くほど高くつるを伸ばすことはない。地上部の寿命は数年で枯死するが、地下茎が発達して新しい地上茎を伸ばすので、個体自体は生き残る。

葉は10㎝程度、長い倒卵形で先端はやや尖る。葉縁には細かいきょ歯があり、葉脈が凹む。葉の裏面の脈上に乳頭状の突起がある。

初夏、細い柄をだして、黄白色で芳香のある花を付け、基部は赤身を帯びる。花弁とがく片の区別は無く、花被片は6-12、雄花の花被片は小さく、雄しべ6、基部は合着する。雌花の花被片は大きく、多数の雌しべがある。単生花をつけるこの種では一生の間に性転換して、雄花をつけたり、雌花をつけたり、また雄花と雌花をつけたりする(山口陽子)。

花後に花床が伸びて大小多数の球形の漿果をつけ、穂状に垂れ下がる。

秋に果実は赤く熟す。松ヤニの様な独特の芳香がある。

種子は腎臓形で、それぞれ1-2個を生じる。

特性

果実にαー、βーピネン、カンフェン、ミルセン、αーテルピネン、リモネン、、チモール、ボルニルアセテート、リナロール、ボルネオール、イランゲン、安息香酸、αー、βーカミグレン、カミグレナール、シトラール、リグナン類のゴミシンA, B, C,D,F,G,シザンドリン、プレゴミシン、βーシトステロール、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸が含まれる。

チョウセンゴミシ3

生薬

生薬名

五味子 神農本草経(中)はチョウセンゴミシSchisandra chinensis Baillonで同じ

使用部分

果実

採集時期・方法

10から11月に良く熟した果実を日乾燥させる。または晒して乾燥。或いは蒸した後晒乾。果実コウ及び雑質を除く。

色・味・香り

外面は暗褐色~黒褐色。弱い匂い及び酸味があり、後に渋くて苦い。

撰品

黒色で、湿り気があり、酸味の強いもの、なるべく軸が少なく、良く乾いていて、香の強いもの

主な薬用成分

精油(citral),リグナン類(schizandrin A~D),有機酸(citric acid)

公定書

日本薬局方 ―ゴミシ SCHISANDRAE FRUCTUS

         チョウセンゴミシSchisandra chinensis

Baillon(schisandraceae)の果実

  局外生規:―

  中共薬典  ―木蘭科植物 五味子Schizandra chinensis(Turcz)Baill

         的乾燥成熟果実

漢方例

小青竜湯(傷・金)、苓桂味甘湯(傷)

薬性・薬味

酸、温

応用・利用

滋養強壮 鎮咳 止汗

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

朝鮮から移入されたが、享保年間に朝鮮半島から漢薬として伝えられた。平賀源内が渡来の五味子の栽培に成功し、後に日本国内にも生育していることがわかった。

漢方ではショウガなどと共に用いられる基本的生薬の1つ。

生果を果実酒、乾果を茶などに利用。

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No.21 ニッケイ

ニッケイ2

科・属名

クスノキ科 Lauraceae

ニッケイ属 Cinnamomum

学名

Cinnamomum okinawense Hatusima,

英名

Cinamon

和名の由来

中国では香木を「桂」と呼び、本種では樹皮が厚いことから「肉桂」と呼ばれた。これが転じてニッケイとなる。

学名の由来

Cinnamomum ギリシャ語のKino 巻く + amomos 香味 に由来 okinawaense 沖縄の。

木の特性

分布

中国南部、日本(沖縄北部、本島、久米島から奄美群島の徳之島)に自生。

中国原産とされていたが、近年日本での自生が確認された。

形態

常緑高木。

幹は直立し、灰褐色、平滑。

葉には三行脈があり、しっかりした革質、円形、先は長く尖る。側脈が葉の先端まで伸びる点でヤブニッケイと区別する。幼葉には白色毛の短毛があるが成葉の表面は無毛となる。

初夏に淡黄緑色の花を付ける。当年枝の葉腋に集散花序を出し、花はまばらで小さい。花被片は6、がく片との区別は無い。雄しべは6,雌しべは1。

果実は球形の液果で秋に黒紫色に熟す。杯状の花托が果実の基部を包む。

種子は1個。

特性

樹皮はケイヒアルデヒド、オイゲノール、カンフェン、シネオール、リナロール、、葉はシトラール、シネオールを含む。

種子は脂肪油を豊富に含み、その成分は主にジラウリルモノカプリンで、カカオ脂の代用とする。

ニッケイ

生薬

生薬名

(A) 菌桂 神農本草経(上)はCinnamomum cassia Blume

使用部分

幹皮 枝皮

採集時期・方法

十数年経った樹木を伐採し、幹・枝の皮を秋にはぎとり陰乾する。

色・味・香り

外面 暗赤褐色。内面 赤褐色。特異な芳香があり、味は甘く、辛く、後にやや粘液性で、わずかに収斂性である。

撰品

芳香・甘味・辛みがともに強く、渋味と粘液性の少ないもの。

主な薬用成分

精油(ケイアルデヒド)、ジテルペノイド(cinnzeilanol)、セスキテルペノイド(cinnamoside)、タンニン(cinnamtannin)、糖(glucose fructose sucrose)

公定書

日本薬局方 ―ケイヒとして収載。

       ケイヒCINNAMOMI CORTEX

       Cinnamomum cassia Blume(Lauraceae)の樹皮又は周皮の一部を除いたもの

 局外生規:―

  中共薬典―肉桂CORTEX CINNAMOMI

       樟科植物肉桂Cinnamomum cassia Presl的干燥樹皮

       桂枝RAMULUS CINNAMOMI

       樟科植物肉桂Cinnamomum cassia Presl的干燥きょう枝

漢方例

桂枝湯、葛根湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯など非常に多数の薬方に用いられている。

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

発汗、解熱、鎮痛、(頭痛・身体疼痛など)、鎮静(のぼせ)、鎮痙などの作用あり、漢方薬に配合される。

芳香建胃剤として食欲不振・消化不良に粉末が生薬製剤とされる。

その他

菌桂は現在通用さてない生薬名である。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

根、幹の皮を菓子の香料、香辛料とする。葉や皮を噛めば,香りと辛みがある。細い根は10cm程度に切って束ね、「ニッキ」と呼んで子供たちが菓子代わりにした。

本樹種は江戸時代享保年間に中国から輸入され、国内に植栽されたとの説があり、Cinnamomum loureirii Neesの学名が使用されていたが、近年になって沖縄にも野生状に生育するところがあり、Cinnamomum okinawense Hatusimaの学名が使われるようになった。

しかし、本当の自生地ははっきりしない。かつては高知県、和歌山県で栽培されていたが今はほとんど栽培されていない。ニッケイの葉を餅を包むのに用い、また、シキミと同様に仏前に供える地域もある。幹の皮は線香にも用いる。根または根皮は、中国の桂皮の代用とされ、粉末、水溶液などにして芳香性健胃剤として用いられる。飲料、石鹸香料にもされる。

植物全体、特に根や樹皮に芳香がある。

漢方では樹皮をケイヒ(桂皮)、小枝をケイシ(桂枝)、根の皮はニッケイ(肉桂)と呼ぶ。また最近ではシナモンとも呼ばれる。

本種に類似の種は広くアジアの熱帯地方に木にまつわる話し、古くからスパイスとして使われている。市場では「シナモン」と「カシア」の区別がされる場合もあるが、カシアは近縁種のシナニッケイの樹皮からつくられ、成分が少し異なるが、日本では両方をニッケイと呼んでいる。

中国では後漢時代の「神農本草経」に記されている。旧約聖書や古代ローマの記録にも見られる。エジプトではBC4000年頃にミイラの防腐剤として使われていた記録がある. n日本へも古くから生薬として伝わり、勝訴す院にも乾燥したシナモンが保存されている。

日本へも古くから生薬として伝わり、正倉院にも乾燥したシナモンが保存されている。

アオスジアゲハの食樹。

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No.22 ミツバアケビ

ミツバアケビ5

科・属名

アケビ科 Lardizabaraceae

アケビ属 Akebia

学名

Akebia trifoliata (Tunb.) Koidz.

英名

Three leaf akebia

和名の由来

果実が熟して割れて中に果肉が見える様子を「開け実」がアケビになった。ミツバは小葉が3枚であるため。

学名の由来

Akebia 和名に由来。trifoliataは葉身が3小葉から成っていることを意味する。

木の特性

分布

中国、日本(北海道、本州、四国、九州)に自生。

山地に生育。森林破壊のあとで早い時期に入り込むがつる植物として他の樹木の生育を損なうことはない。

形態

つる性落葉植物。雌雄同株。

茎が他の樹木にからみ上に伸びる、太いものは直径2㎝にもなる。

葉は互生し、掌状複葉、複葉は3枚、小葉は広卵形、先端は凹む。葉縁にはきょ歯がある。葉柄は10㎝前後で長い。

早春、葉の展開とほぼ同時に若い葉の葉腋から総状花序をつける。単生花。花序の先端に10数個の雄花をつけ、基部には1-3の大きな雌花をつける。

雄花は小形で濃紫色、花被片は3、雄しべは6。雌花は3㎝くらいの花柄をつけ、花被片は3、円柱形の雌しべが3-9。花被片は花弁状のがく片のみ。

果実は液果、長さ10㎝くらいの長だ円形、秋に紫色に熟し裂開する。果肉は白色、中に多数の濃褐色の種子が見られる。半透明の仮種皮が種子を包む。

特性

材はヘデラゲニン、オレアノール酸、種子はオレイン酸、リノレイン酸、パルミチン酸を主成分とする脂肪酸を多く含む。

ミツバアケビ4

生薬

生薬名

通草 神農本草経(中)は Akebia quinata (Thunb.)Decneで同じ

使用部分

採集時期・方法

蔓性の直径1~2センチの茎を輪切りにし、乾燥。

色・味・香り

皮面は暗灰褐色。ほとんどにおいがなく、味はわずかにえぐい。

撰品

なるべく大径で、そろっているもの。

主な薬用成分

トリテルペノイドサポニン(akeboside akebin),無機物(カリウム)

公定書

日本薬局方 ―モクツウ AKEBIAE CAURIS

       アケビ Akebia quinata Decaisne  又は

      ミツバアケビ A.trifoliata Koizumi(Lardizabalaceae)のつる性の茎を、

通例、横切りしたもの

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

五淋散(和剤局方)、消風散(外科正宗)

薬性・薬味

辛、平

応用・利用

民間療法として、腎臓炎・尿道炎・膀胱炎・浮腫みに内服。おできに煎じ汁で洗う。

漢方薬では消炎・利尿・鎮痛・通経・通乳の作用があり、膀胱炎・むくみ・湿疹・関節リュウマチ・神経痛・月経不順・母乳不足などを改善する薬方に配合される。

その他

異物同名品が中国では流通している。ウマノスズクサ科の木通馬兜鈴Aristrochia manshuriensis Kim.が関木通で流通している。

関木通には腎障害を起こすアリストロキア酸を含有しているので、危険である。アケビ科の木通の起原植物であるアケビには問題はない。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

紫色の果皮の中に多くの種子と白色半透明の甘い果肉があり、果肉を食用とする。果肉は甘いが、果皮は苦みがあるがあり、油炒め、みそ味が良く合う。春先の若いつるの先端は軽く湯がいて三杯酢で食す。種子を集めて圧搾して脂肪油を採取し、食用とする地域もある。

果皮は油でいためごまよごしにしたり、、葉をマタタビの葉などと共に細かにきざみ塩漬け(木芽漬)にして食用とする。

つるが丈夫なので,薪を結束するのに使用したり、はく皮したものを椅子、バスケット果物かご、魚籠洋服入れなどや、長野の鳩車のような玩具細工の材料とする。

アケビの木化したつるを輪切りにしたものは木通で、生薬とする。果実を乾燥した預知子も漢薬とする。 染料としてはアルミ媒染で黄色、銅媒染で茶色系鼠色、鉄媒染で鶯色などに染まる。

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No.23 ボタン

ボタン

科・属名

ボタン科 Paeoniaceae

ボタン属 Paeonia

学名

Paeonia suffruticosa Anderews

英名

Tree paeony、peony

和名の由来

中国名「牡丹」を音読みして「ぼたん」。

学名の由来

属名Paeoniaはギリシャ神話の医者の名前。種小名suffruticosaは亜低木を意味する。

木の特性

分布

中国陝西省の山岳地帯にのみ自生。

形態

落葉小低木。

高さ1-2㍍程度。葉は2回3出複葉、小葉には深い切れ込みがある。

晩春、若い枝の先端に20㎝程度の花を1個付ける。花は直径15㎝ほど、紅紫色、がく片は5で宿存性、花弁は5-10。雄しべも多数、雌しべは3-5、離生心皮。

果実は晩夏に結実、黒色の種子には稔性があり、赤い種子は不稔。

多数の観賞用品種がある。

特性

根皮はペオノール、ペオノライド、ペオノサイド、ペオニフロリン、オキシペオニフロリン、ベンゾイルペオニフロリン、ベンゾイルオキシペオニフロリン、カンペステロール、βーシトステロール、安息香酸を含む。

ペオノールは大腸菌、ブドウ球菌などに対して抗菌作用があるほか、抗炎症作用、中枢抑制作用がある。

ペオノールは血小板凝集抑制作用も有し、血栓性疾患に有効である。

花の赤色はペオニンによる。

ボタン2

生薬

生薬名

牡丹 神農本草経(下)はボタンPaeonia suffruticosa Anderewsで同じ

使用部分

根皮

採集時期・方法

苗から4~5年目の秋に根を掘り取り、木部(芯)を抜き取り、根皮を日干しにする。

色・味・香り

外面は暗褐色~帯紫褐色。内面は淡灰褐色~帯紫褐色。特異な匂いがあり、味はわずかに辛くて苦い。

撰品

芯がなく、香気の強いもの。

主な薬用成分

モノテルペン配糖体(paeoniflorin)フエノール類(paeonol)、タンニン類(catechin)、 糖類(sucrose)

公定書

日本薬局方 ―ボタンピ MOUTAN CORTEX

       ボタン Paeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims)

          (Paeoniaceae)の根皮

 局外生規 ―

 中共薬典 牡丹皮 毛りょう科植物 牡丹 Paeonia suffruticosa Andr.

          的乾燥根皮

漢方例

桂枝茯苓丸(金)、大黄牡丹皮湯(金)、八地味地黄丸(金)、加味逍遥散(女科撮要)、きゅう帰調血飲(万病回春)

薬性・薬味

辛、寒

応用・利用

鎮痛・鎮静・消炎・通経・排膿作用があり、月経不順・月経困難・便秘・痔疾などを改善する薬方に配合される。

その他

花だけ見ると、芍薬と間違えやすい。シャクヤクは草で、ボタンは木である。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園用花木として好まれる。ボタンは中国原産でわが国には8世紀ごろに薬用植物として渡来。その後、多くの園芸品種が作出された。ボタンは別名、ハツカグサ、フカミグサ、ナトリグサとも呼ばれる。

古く平安時代の延喜、天暦の頃、当時の渤海国からもたらされ、薬用に用いられていた。フカミグサの名はそれに由来する。

生薬の牡丹皮は根の表皮。

古くから中国、日本、ヨーロッパなど各地で観賞用花木として多くの園芸品種がつくられた。花色も赤、紅紫、黄色、白などさまざまで、雄しべの弁化で花弁が重弁化したもの、秋から冬にかけて咲く寒牡丹などの品種がある。日本と中国ではそれぞれ異なる固有の品種群がつくり出されてきた。

枕草子で最初に日本文学の中に取り入れられ、江戸時代には俳句の初夏、夏の季語にもなった。

怪談の「牡丹灯篭」、歌舞伎の「怪異牡丹灯籠」は中国文学の「牡丹燈記」が原本である。

牡丹紋は家紋としては高貴なものであり、朝廷で関白を務めた近衛家が牛車に付ける車紋として最初に用い、京都東本願寺の真言大谷派の宗紋にもされた。これは近衛家の姫が幾たびか嫁いだことから使われるようになったものである。

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No.24 サルナシ (別名 シラクチズル,シラクチカズラ)

サルナシ

科・属名

マタタビ科

マタタビ属

学名

Actinidia arguta (Sieb. et Zucc.) Planch.ex miq

英名

Tara vine、Hardy kiwifruit、kiwi berry, arctic kiwi,Baby kiwi, dessert kiwi, grape kiwi, northern kiwi, cocktail kiwi

和名の由来

果実が梨に似ているのと、猿が食べることを意味する。別名で、「シラ」はマシラ(猿)が略されたもので、本来はマシラクチズルであったらしい。

学名の由来

属名Actinidiaは花柱が放射状であることから放射線形を意味する。Actinidia ギリシャ語のaktis放線+eidos形 Arguta 尖ったの意。

木の特性

分布

日本(本州中部600㍍程度の山岳地帯)、朝鮮半島、中国北部。

形態

雌雄異株または雌雄雑居性。

つるの径は太い物で15㎝、長さ50㍍にも達する。壮木の樹皮は不規則に割れ大きく剥離。

髄はひだ状で、白-淡褐色。

葉は円形、葉縁には細きょ歯、成葉の裏面には脈沿いに剛毛があり、葉柄は淡紅色。

花は初夏、集散花序を当年枝の葉腋につける。雄花序には3-7個、雌花と両生花には1-3個の白い花を付ける。がく片5,花弁も5。雄しべは多数、葯は暗紫色。子房は広卵形、花柱1は花後も宿存。

果実は液果、長だ円形、淡黄色に熟す。

種子は多数、だ円形。

サルナシ3

生薬

生薬名

羊桃 神農本草経(下)はシナサルナシ Actinidia chinensis Planch

使用部分

茎 根 根皮

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

解熱・利尿・活血・消腫作用があり、肝炎・むくみ

その他

陽桃 カタバミ科 ゴレンシ

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

別名:コクワ。

つる性木本で、丈夫なつるは、蔓橋の材料、筏のつなぎに使われていたので、ハシカズラ、イカダムスビの呼び名もある。、炭俵にも使われていた。果実は甘酢の味でうまく、食用となり、また、果実酒とする。猿が食用として猿酒を造ったとの言い伝えがある。

丈夫で腐り難いのでかづら橋など吊り橋にも使われる。木曽川では船の材料にもされた。

水を吸い上げる力が強いので樹勢のある時期に太い茎を切ると大量の樹液が出る。飲料水として利用出来るが、つるを切ればその先は枯死する事になる。

果実は甘く、果実酒などにもつくられる。山の動物の重要な食餌である。鳥散布では果実が赤色か黒色であるが、ほ乳類で発達した嗅覚を刺激する芳香があるこのような果実では種子散布はほ乳類による。

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No.25 ウメ

ウメ

科・属名

バラ科 Rosaceae

サクラ属 Prunus

学名

Prunus mume Sieb. et Zucc.

英名

Japanese apricot, Chinese plum, Japanese apricot,mume(日本語のウメから), mei(中国語のウメから)

和名の由来

中国名梅の音meiが転化した、朝鮮語のマイに由来、あるいは薬用として渡来した果実の燻製の烏梅(うばい)の呼び名に由来するとの説がある。

学名の由来

Prunus ラテン語のスモモ(plum)が語源。Mume 江戸時代の梅の呼び名ムメに由来。

木の特性

分布

中国南部、揚子江流域に自生。日本、朝鮮半島、台湾、ベトナムで栽培。

形態

落葉高木。樹高は10mにもなる。

若い枝は緑色、無毛。

葉はだ円形で先端が尖り、重きょ歯がある。

花は早春、葉に先立って咲く。通常は白色だが、紅色、淡紅色もある。花弁、がく片共に5、雄しべは多数で花弁より短い。雌しべは1で子房に密毛がある。

果実は核果、球形、表面に細網があり、片側に浅い溝がある。初夏に黄色に熟す。核は扁平なだ円形、表面は凹凸で被われる。

特性

果実は、オレアノール酸などのトリテルペンのほか、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸を含む。煎汁に抗菌作用がある。果実の酸味に収れん作用があり、鎮咳、解熱、整腸などの作用がある。

果実と葉にアミグダリンが含まれる。

アミグダリンは青酸配糖体で、地上に落ちると土壌微生物やエルムシンという酵素によって加水分解され、最終的にベンズアルデヒドと青酸になる。

ベンズアルデヒドはさらに酸化されて安息香酸となり、他の植物の成長を阻害するアレロパシーの原因となる。

花はベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、イソオイゲノールベンジルベンゾエイト、安息香酸を含み、主たるにおいはベンズアルデヒドによるものである。

辺材は淡黄褐色、心材は紅褐色で、辺心材の境は明瞭。

年輪も明瞭で肌目は緻密。材の気乾比重は0.75~0.90で硬い。割れにくく耐朽性は高い。

ウメ2

生薬

生薬名

梅実 神農本草経(中)はウメPrunus mume Sieb. et Zucc.で同じ

使用部分

薫製した未熟果実(漢方薬では烏梅とい名称で通用している。)

採集時期・方法

5月に未熟果実を採取し、薫蒸して6割まで乾燥。軽くかき混ぜ、均一に乾燥後、2~3週間密封し、表面を黒変させる。

撰品

果肉が半乾きで潤いがあり、厚く酸味の強いもの

主な薬用成分

クエン酸、少量のリンゴ酸、酒石酸

漢方例

烏梅丸(傷)、人参養胃湯(和剤局方)

薬性・薬味

酸、平

応用・利用

止咳・止嘔・止渇・止瀉・駆虫の作用があり、口渇や悪心・慢性の下痢・回虫症による腹痛・咳嗽・煩熱などに用いる。

その他

烏梅から樹木の日本名ウメになったという。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

ウメは果実を利用する実梅と花を観賞する目的の花梅がある。

梅は古くから改良され、鉢植え、盆栽、庭木などさまざま。古く中国から渡来し栽培され、栽培品種は300以上と言われている。

花を観賞用とし、庭園樹、公園樹、盆栽にされる。果実は塩漬けにして梅干しとして食用。江戸時代に各藩が非常食として梅干を作ることが、奨励され現在まで続いている。紀州の南高梅は味も品質も良いことから高級梅干しと評価されている。梅の実は6月の雨期に熟するので、つゆの頃を梅雨と言うようになった。諺で「梅は食べても実(さね)食うな、中に天神寝て御座る」と青酸配糖体を含む未熟の種子をたべないようにと諫めている。烏梅(うばい)は漢方薬の一つで、黄色に色づいた梅の実を煙でいぶしもの。

中国明代の医学書「本草綱目」を編纂した「李時珍」には烏梅の製法について「青梅を採って籠に盛り、籠突の上で黒く薫じる」と著している。

烏梅には有害な腸内細菌に対して抑制作用がある。民間薬としては、梅肉が口内や舌の荒れ、歯痛、梅の種は胃痛、歯痛、梅の花や皮を黒焼きにしたものが食中毒に効果があるとして使われてきた。

果実をむいて核を取り去り干したものが剥き梅(むきうめ)で、烏梅同様、媒染剤に使われていた。梅の木の樹皮は梅皮(うめかわ)と言い、染料に用いられていた。梅皮にハンノキの樹皮を混ぜて煎じたものも染料として使われていた。

中国では古来花と言えばウメであったことから、奈良時代に中国から持ち帰った頃は日本でもウメの花が尊ばれ万葉時代には花と言えばサクラではなくウメであった。

万葉集には百首以上のウメが読み込まれており、ウメを読んだ歌はハギに次いで多い。 「梅の花散らまく惜しみわが苑の竹の林に鶯鳴くも」(巻5)などである。

時代は下って、[拾遺和歌集]には菅原道真の「東風吹かば匂いおこせよ梅の花、あるじなしとて春なわすれそ」の歌があり、太宰府天満宮には、飛んで行って花を咲かせたと伝えらえる「飛梅(とびうめ)」がある。

材は器具材として利用。数珠にも使われるほか、そろばん玉、将棋の駒、箸、箱、工具の柄、漆器木地、ステッキ、三味線の胴、彫刻材に利用される。

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No.26 モモ

モモ

科・属名

バラ科 Rosaceae

サクラ属 Prunus

学名

runus persica (L.) Batsch

英名

Peach

和名の由来

「真実(まみ)」は味から転じた、「燃実(もえみ)」は果実の色から転じた、「百(もも)」は果実を多数付けるから転じたなどの説がある。

学名の由来

PrunusはPlumのラテン名、persicaはペルシャを意味する。

木の特性

分布

中国西北部、黄河上流の高山地帯に自生。

日本には縄文から弥生時代に大陸から栽培種が伝搬した。

形態

落葉小高木。

若枝は紫褐色または緑色、樹皮は暗紫褐色。

材質は割れにくく丈夫である。

葉は花と同時か少し後に出る、長さ15㎝で細長い、葉縁は荒いきょ歯がある。葉の基部に腺点がある。

春に前年枝の葉腋に1-3個の薄桃色の花を付ける。花は4㎝程度、花の色は変化が多い。雄しべは多数、雌しべ1。

夏に果実が実り、球形、片面に縦の溝がある。核果は赤みのある黄白色、有毛の薄い皮に被われる。果肉は水分を良く含み柔らかい。

種子は大きく、表面にシワがよる。

特性

種子はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、のグリセライド、青酸配糖体のアミグダリン、花はケンペロール配糖体、クマリン、葉はタンニン、アミグダリンプルナシンを含み、抗腫瘍活性がある。

辺材は褐白色、心材は褐色、紅褐色、暗褐色などがあり、辺材と心材の境はやや不明瞭。

肌目は緻密。材の気乾比重は0.7~0.85程度であり、材質は重硬で割れにくい。

モモ2

生薬

生薬名

桃核 神農本草経(下)は Prunus persica (L.)Batschで同じ

使用部分

種子

採集時期・方法

夏~秋に果実を採取して、数ヶ月間積み重ねた後、殻を除き、種子を取りだし、日干しにする。

色・味・香り

赤褐色~淡褐色。殆ど匂いがなく、味はわずかに苦く、油様である。

撰品

肥大し、油分の多いもの。

主な薬用成分

青酸配糖体, 酵素、脂肪

漢方例

桃核承気湯(金)、桂枝茯苓丸(金)

薬性・薬味

苦甘、平

応用・利用

活血・排膿・駆お血・鎮痛・潤腸作用があり、下腹部の疼痛・腹部の血液の停滞・月経不順などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実を生食。加工して缶詰とし、種子の内核を桃核、桃仁と呼び、蕾とともに生薬とされる。

種子に鎮咳、消炎、花蕾に利尿などの作用があることが知られている。

本への渡来は早く、弥生式時代の遺跡からモモの核が出土しており、早い時代に中国から渡来している。食用の他に祭祀にも用いられた形跡があり、斉串(いぐし。清められた串、玉串)などと共に出土している。平安時代にはまだ食用とされるよりは薬用、観賞用だったと言われている。明治時代には甘味の強い水蜜桃系品種が輸入され食用とされるようになった。材は器具材、漆器木地、玩具、そろばん玉などに利用される。

葉は民間薬として風呂に入れてあせもをとるのに効果がある。

花を観賞する「花桃」は江戸時代に多くが開発されて200品種以上が存在する。

モモは邪気を払う力を持つと考えれていた。

事記では「いざなぎの尊」が桃をなげて鬼女「よもつしこめ」を退散させたと記されている。 万葉集には大伴家持の「春の苑(その)、くれないにおう桃の花、した照道に出で立つおとめ」の歌がある。桃から生まれた桃太郎の話、ひな祭りが桃の節句と呼ばれ、モモの花の枝を添えるなど、モモを題材とした物語や習わしは多い。

シルクロードを経てペルシャ経由で西へも伝えられ、英名Peachはペルシャ語起源のラテン語でpersicum malum 「ペルシャのリンゴ」に由来、種小名「リンゴ」の由来も同じ。

樹皮は染料とされる。

桃は発芽から結実まで比較的短い事から他の果樹と比較されることが多く、次のような言葉がある。

桃栗3年柿8年。桃栗3年柿8年、梨の大馬鹿18年。

桃栗3年柿8年、クリの大馬鹿20年。

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No.27 ニワウメ

ニワウメ

科・属名

バラ科 Rosaceae

サクラ属 Prunus

学名

Prunus japonica Thunb.

英名

Japanese bush cherry、Korean cherry,Flowering almond,Oriental bush cherry

和名の由来

庭に植える、ウメに似た花の木の意。

学名の由来

PrunusはPlumのラテン名, Japonica 日本の。

木の特性

分布

原産地は中国(華北、華中、華南の産地)。

日本へは江戸時代に渡来。

水はけが良くい湿り気のある環境を好み、日陰でも日向でも育つ。林内や開けた場所に育つ。

形態

落葉低木。

若い枝は細く、緑紫色、無毛。

葉はほぼ卵形、先端は尖り、裏面の脈上は有毛。基部には1対の蜜腺、葉縁は重きょ歯となる。

春に前年枝に1-3個の淡紅色または白い花を付ける。短い花柄があり、葉と前後して開花、径2㎝以下で枝を被うように多数が咲く。

がく筒は広い釣り鐘形、花弁は5、雄しべは多数、雌しべは1。

果実は核果、ほぼ球形で径1㎝、初夏に鮮紅色に熟し、先端に雌しべの柱頭が残る。

特性

種子は青酸配糖体のアミグダリンのほか、サポニン、フィトステロール、ビタミンB1を含む。

種子は利尿、便秘に効果がある。

ニワウメ2

生薬

生薬名

郁核 神農本草経(下)はPrunus tomentosa Thunb.で同じ

使用部分

種子

採集時期・方法

秋(8~10月)に成熟果実を採取し、日陰湿った所に積み重ね、果肉を腐乱させ、殻を取り出し、割り、中の種子を集め、乾燥。

色・味・香り

黄白色か黄褐色。あるいは濃褐色。匂いは弱く、すこし苦味がある。

撰品

肉が厚く、淡黄白色で、形が揃っていて砕けておらず、油も進出せず、核の殻がきれいに除去されているものが良品とされる。

主な薬用成分

アミグダリン サポニン 脂肪 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

五仁丸(世医得効方)、郁李仁湯(本朝経験方)

薬性・薬味

酸、平

応用・利用

潤腸・通便・利水・消腫の作用があり、便秘や排尿減少・むくみなどに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹のほか、切り花や鉢物として利用する。果実は甘く、食用となり、薬用酒にもなる。

種子(仁)や根皮も薬用とする。

葉では緑色に染まり、果実は緑色から灰色の染色に用いる。

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No.28 アンズ

アンズ

科・属名

バラ科 Rosaceae

サクラ属 Prunus

学名

Prunus armeniaca L. var

英名

Common apricot, Apricot

和名の由来

漢名の「杏子」の唐読みからアンズとなった。

学名の由来

Prunus ギリシャ語のPloumae(スモモ)が語源。armeniaca 小アジアのアルメニアの地名を意味する。

木の特性

分布

ヒマラヤ西部から中央アジアにかけて自生。

日本には中国を経由して奈良時代にウメと共に渡来したと言う。

形態

落葉小高木、または高木。

樹皮は赤みを帯び、若い枝は紫褐色。

葉は広卵形、先端は鋭突。葉の基部には蜜腺がある。表面は無毛、裏面基部だけ有毛。春、前年枝の葉腋に1-2個の淡紅色の無柄の花を付ける。花は葉より早く開花し、ウメによく似る。がく筒は紅紫色で先端は尖り、花時に反り返る点で、反り返らないウメと区別する。花弁は先端が丸く、基部が細く、白または淡紅色。雄しべは多数、雌しべは1、がく筒内に納まり、有毛。

初夏に橙黄色に熟し、果実の表面は細毛が密生する。核果。

種子の表面は編み目模様がある(ウメでは小孔になる)。果実は熟すると種子と果肉は離れやすい(ウメでは離れない)。

特性

種子はアミグダリンを含む。アミグダリンは酵素エルムシンで加水分解されて、青酸、ベンズアルデヒド、ブドウ糖となる。

種子成分には鎮咳作用がある。

材は辺材が黄白色、心材は灰褐色で、硬く緻密である。

生薬

生薬名

杏核 神農本草経(下)はホンアンズ Prunus armeniaca L.で同じ

使用部分

種子

採集時期・方法

夏 果実が熟したら、殻を割って、中の種子だけを集め、晒干にする。

色・味・香り

褐色。ほとんどにおいがなく、味は苦く、油っぽい。

撰品

粒がそろい、丸みがあり、味苦く外皮の剥げていないもの。

主な薬用成分

青酸配糖体 脂肪油 ステロイド(estrone 、estradiolー17ーβ)

公定書

日本薬局方 ―キヨウニン  ARMENIACAE SEMEN

       ホンアンズ Prunus armeniaca Linne 又は

       アンズ P. armeniaca Linne var. ansu Maximowicz

      (Rosaceae)の種子

 局外生規 ―

 中共薬典 ―苦杏仁 薔薇科植物 山杏 Prunus armeniaca L.

           var.ansu maxim.

       西伯利亜杏 P.sibirica L.

       東北杏   P.mandshurica (Maxim.)Koehne

       或  杏   P.armeriaca L. 的乾燥成熟種子

漢方例

麻黄湯(傷)、麻杏甘草石湯(金)

薬性・薬味

苦、温

応用・利用

鎮咳・利水・通便の作用があり、喘咳・喘息・去痰・便秘などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実を食用とする。乾しアンズは実を半切りして核を取り去り、天日で乾かしたもので菓子に入れたり、料理に使う。中国では熱い湯を注ぎ、「杏湯」を作って強壮様に飲む。砂糖漬けにして乾燥したものやジャムにもされる。

材は彫刻用、小細工物用に利用される。 薬用、観賞用に栽培される。

中国では古くからこの果実が利用され、それに因んだ故事も伝えられている。名医の代名詞「杏林」もその1つである。

中国、三国時代に薫奉(とうほう)という優れた医者が居り、貧乏人からは治療代を取らず、その代わり完治した症状の軽い患者にはスモモを1株、重病だった患者には5株を植えさせた。このため数年後には家の周りがアンズ林になった。その後この故事に因み、人間的にも優れた医師が「杏林」と呼ばれるようになった。

杏林大学、ドラッグストアの杏林堂などはその故事に習ったものであろう。

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No.29 オオカナメモチ (別名 ナガバカナメモチ,アカメモチ)

オオカナメモチ2

科・属名

バラ科 Rosaceae

カナメモチ属 Photinia

学名

Photinia serrulata Lindl.

英名

Low Photinia、Japanese photinia

和名の由来

カナメモチは、材が硬いので扇の骨にすることに由来し、モチノキに似ていることによる。オオカナメモチはカナメモチよりも葉が大きい。

学名の由来

Photinia ギリシャ語の「輝く」の意。葉に光沢があるため。Serrata 細かいきょ歯があるため。

木の特性

分布

中国、台湾、フィリピンなど東南アジアに分布。

日本では本州に希に自生、奄美大島、沖縄などに分布。

照葉樹林の低木層を作る。広く栽培される。

形態

常緑小高木。

枝は株立ちする。カナメモチより大型。樹皮は暗褐色-灰褐色、成木では不規則に剥がれる。葉は革質、互生、長さ15㎝ほど、葉縁には刺状の細いきょ歯がある。

幼葉は帶紅色、成葉になると緑色。新葉が出てから古い葉が紅葉して落ちる。葉は堅く、乾燥に強く、日当たりを好む。晩春から夏に複散房花序で頂生、白色で小さい5弁の花を付ける。

雄しべは20、2輪に生じ、外輪のものは花弁より長く、内輪では短い。葯は帶紫色。雌しべは2、希に3、基部で合着。秋に球形の果実は赤く熟す。種子は1、長さ2㍉、卵形。

生薬

生薬名

石南草 神農本草経(下)はPhotinia serrulata Lindl.で同じ

使用部分

採集時期・方法

夏に採取し、洗浄して日で乾燥する。或いは生のものを適宜使用する。

撰品

肥大した成葉で、緑色の濃いもの。

主な薬用成分

prunusin(加水分解して、青酸を生ずる。)urusolic acid

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

辛、平

応用・利用

鎮痛・利尿・強壮の作用があり、痛風・リュウマチの痛み・腎臓病に用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

公園樹、庇陰樹として植栽。民間で、乾燥した葉を関節痛、偏頭痛、強壮に用いる。庭木、 材が硬いので細工に用いる。ヒロヘリアオイラガの食樹。葉は漢薬とされる。

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No.30 ノイバラ

ノイバラ

科・属名

バラ科 Rosaceae

バラ属 Rosa

学名

Rosa multiflora Thunb.

英名

Mutiflora Japonica、Baby rose, Eijitu rose, Japanese rose, Many-flowered rose, Seven sisters rose

和名の由来

古名は茨(いばら)宇波良(うばら)で、「いばら」は刺のある植物の総称であった。野に生える「茨」か。漢名の「薔薇」(そうび)は平安時代に使われていた。

学名の由来

Rosa ケルト語のrhodd「赤色」,Multiflora ラテン語で花が多いこと。

木の特性

分布

日本(北海道-九州)、朝鮮半島に分布。

日本では野原、草原、道ばた、河川敷などに生育するが、林内には殆ど見られない。

地上部を刈り込まれても良く萌芽する。

形態

半つる性落葉植物。

根本の茎は太くなるが、根本は太くなるが、主軸は余り伸びずに、細かく分枝する。つる上には刺が対生。葉は奇数羽状複葉。小葉は7-9枚、だ円形、細かいきょ歯がある。

初夏に淡紅色から白色または淡紅色の花を散房花序に付ける。花弁は5、2㎝ほどの大きさ、雄しべは多数、黄色、雌しべ1.香りが良い。秋に8㎜ほどの偽果が赤く熟す。

特性

偽果は、フラボン配糖体のムルチノサイドA, B,ムルチフロリンA, B, ケルセチンールチノサイド のほかに紅色素のリコピンを含む。

ムルチフロリンは加水分解によってケンペロールを生成する。

ノイバラ3

生薬

生薬名

営実 神農本草経(中)はノイバラ Rosa multiflora Thunb.で同じ

使用部分

偽果

採集時期・方法

果実=11月頃、完全に赤く熟さず、まだ青みがかったままの果実を採集し、 日干しにする。 根 =秋に根を掘り取る。

色・味・香り

わずかににおいがあり、花床は甘くて酸味がある。堅果は初め粘液様で、後に渋くて苦く、刺激性がある。

撰品

色が鮮やかで粒がそろい、果柄の少ないもの

主な薬用成分

フラボノイド(ムルチフロリンA、B。ムルチノサイドA,B),紅色素(リコピン)

漢方例

営実湯(本朝経験)【営実 大黄 甘草  実証の腹水】

薬性・薬味

果実 酸温,根 苦渋 平,花 苦渋 寒,葉 苦 寒

応用・利用

瀉下、利水、活血、解毒・理気作用があり、むくみ・脚気・関節の動きをよくし・にきび 瘡毒(おでき)・腫れものなどの皮膚病 月経痛など・健胃・鎮咳・去痰・食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰など多くの民間療法に用いられる。

果実をローズヒップと呼んで、花弁と共にハーブテイーとする。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

ノバラ、シロイバラ、グイ、コモチイバラ、シロバラともいう。園芸品種のバラの接ぎ木用台木として用いられる。果実は生薬とされるが、作用が激しいので民間薬にはならない。

化粧品にも細胞活性効果があるので使われる。本種は侵略的外来種として厄介もの扱いされる地域もあるが、山羊の餌としては有益である。

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No.31 ジャケツイバラ

ジャケツイバラ

科・属名

マメ科 Fabaceae(Leguninosae)

ジャケツイバラ属 Caesalpinia

学名

Caesalpinia decapetala (Roth) Alst. var.Japonica (Sieb. et Zucc.) Ohashi

英名

Mauritlus, Mysore thorn, Cat's claw,Brazilwood

和名の由来

漢字表記は「蛇結茨」(ジャ ケツ イバラ)で枝がもつれながらくねり、互いに絡みあって蛇がどくろを巻いている様子に見立てたもの。

学名の由来

種小名japonicaは日本を意味する。Caesalpinia イタリア法王クレメンス8世の侍医、植物学者のアンドレア・チェザルピーノ(植物分類体系を著す)に因む。decapetala 花弁が10枚の意だが、実際には花弁は5しか無い。Decaは「数字の10」の意。 petalaは「花弁」のこと。宿存性のがく片は花弁と同じ色なので花弁に見立てたらしい。Japonica 日本に生育するの意。

木の特性

分布

ユーラシア大陸東部の暖温帯に分布。

日本では宮城県、山形県以南の本州、四国、九州に分布。

伐採地、川岸、林縁などの日当たりの良い地を好む。

形態

つる性落葉低木。

葉と葉軸の裏面に鋭い鈎状の刺がある。丈夫な刺は次第に発達する。この刺を他の植物に引っかけて登る。若い茎には柔毛を生じ、後に無毛。

葉は2回偶数羽状複葉、長さ30㎝。3-9対の羽片にはそれぞれ5?10対の小葉がつく。小葉はだ円形、2㎝くらい、表面は細毛、裏面は白色。

晩春から初夏に30㎝長さの花序をつける。

花は30㍉くらい、がく片5は黄緑色、花弁5は鮮やかな黄色、大きく開き、僅かに左右対称、上側の1枚には小さな赤い筋が見られる。

雄しべ10は赤い、花糸の下方には白毛が密生。

雌しべは1は雄しべに包み込まれ外からは見えにくい。

果実は豆果、長さ7㎝、縫合線に沿って翼状の小さな突起が出る。

秋に熟し、10個前後の種子が出来る。

特性

種子は豊富に脂肪油を含む(35%)、根の皮はタンニンを含む。

種子の煎汁にはマウス、ラットによる試験で鎮咳、きょ痰作用があり、また、大腸菌,化膿性細菌に対して抗菌作用を示す。

ジャケツイバラ3

生薬

生薬名

雲実 神農本草経(上)はシナジャケツイバラCaesalpinia sepiaria Roxb.

使用部分

種子


【参考画像】

ジャケツイバラ4

採集時期・方法

6~7月ごろ、豆果を採り、日干しにしておくと、殻が裂け、種子が出てくる。さらに、これをよく日干しにして乾燥させる。

色・味・香り

青黄色。噛めば極めて堅く、生臭い臭気がある。

主な薬用成分

種子 黄金色の油,果実 タンニン

公定書

日本薬局方 ―収載なし

  局外生規  ―収載なし

  中共薬典  ―

薬性・薬味

辛温 有毒

応用・利用

細菌性の下痢を止める。回虫・鉤虫を駆除する。打撲の痛みを去る。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

別名カワラフジ。果実を薬用、種子を数珠に利用する。古く、中国から移入された。

日本産と言われるが、これは中国から移入したものの可能性が高い。

種子は生薬とされる。

開花期にはハチなどの蜜源となる。

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No.32 エンジュ

エンジュ

科・属名

マメ科 Fabaceae

クララ属 Sophora

学名

Sophora japonica L.

英名

Japanese pagoda treeJapanese pagoda tree, umbrella tree,Chinese scholar tree

和名の由来

古い呼び名「えにす」から転じた。

学名の由来

Sophora アラビア語の蝶のようなの意。Japonica 日本の

木の特性

分布

中国北部原産。

仏教と共に薬木として日本に伝来。

形態

落葉高木。

樹皮は灰白色、縦に細かく裂け目ができる。若木には全体に皮目がある。

葉は奇数羽状複葉、落葉性の托葉がある。小葉は4-7対が対生か互生し、長さ4㎝ほど、卵形。葉の表面は深緑色、裏面は緑白色、短毛がある。

夏に開花、枝先に円錐花序を出し、白色の蝶形花を付ける。花は日没前に開花。雄しべ10、基部で合生する。雌しべ1は子房上位、有毛。

果実は豆果、種子の間に隔壁があり、先端は尖る。種子は1-8個。夏の終わりに熟す。

種子はだ円形、6㎜程度

特性

花蕾は、主成分としてルチンを含み、ほかにケルセチン、ケンペロール、ゲニスティン配糖体、トリテルペンのベチュリン、ソフォラディオールを含む。

ルチンには毛細血管補強作用、利尿、収斂作用がある。

花蕾には止血剤としての働きもある。

材は辺材が淡黄色、心材は暗褐色で、やや硬いが割りやすい。床柱として好まれる。

エンジュ2

生薬

生薬名

槐実 神農本草経(上)はエンジュSophora japonica L.

使用部分

果実

採集時期・方法

夏に花蕾と花を摘み取り、日乾する

色・味・香り

槐花 黄緑色 匂いがわずかで、味がわずかに苦い。槐米 黄緑色 匂い僅かで、味はわずかに苦く渋い。槐角 黄緑色或いは黄褐色。匂いはわずかで、味は苦い。

主な薬用成分

果実 ―,  花蕾 ルチン

公定書

日本薬局方 ―カイカ

  局外生規  ―

  中共薬典  槐花FLOS SOPHORAE

       豆科植物槐Sophora japonica L.的干燥花及花蕾

        槐角FRUCTUS SOPHORAE

         豆科植物槐Sophora japonica L.的干燥果実

漢方例

枸杞子として、枸菊地黄丸(地黄丸加味方)、地骨皮として、清心蓮子飲(和剤局方)

薬性・薬味

苦、寒

応用・利用

涼血、止血、明目作用があり、血便・痔出血・不正性器出血・こしけ・目の充血に用いられる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹、街路樹、材は建築材、家具材、器具材に利用。春に新葉をゆでて苦みを除いて食用とし、乾燥させて茶の代用とする地方もある。樹皮や蕾は染料。花がまだ開かぬうちのつぼみを採り水に溶けてくる液で布や紙を黄色の染めたり、蕾を煎じた濃縮物を染色に用いる。

その色はフラボン系色素のルチンによるものだが、ルチンは民間で高血圧予防にも用いられる。エンジュの莢は石鹸代用としても使われる。

公害に強いため街路樹、庭園木として植栽。 花、蕾み、果実は薬用。蜜源植物として重要。

仏壇、細工材、彫刻材でエンジュとされるものは近縁種のイヌエンジュである。

漢字では「槐」。これは昔魔除けに槐をもちいて鬼を彫刻し、家の鬼門に置いた事から「木」扁に「鬼」とかいた。

「延寿」と書いて長寿や安産のお守りに使われ、難産の時、エンジュの枝を握らせると苦しまずに出産できるとされた。

漢名を「槐」(ふぁい)と言う。

中国では神聖木とされ出世のために縁起を担いで本種が植えられたという。これは古代中国で宮廷の庭に植えられた3本のエンジュ(槐)に向かって朝廷の最高位の官職である「三公」が座ったとの故事に基づく。そしてこの最高の官位を「槐位」(かいい)と称し、学問と権威の象徴とした。

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No.33 サイカチ

サイカチ7

科・属名

マメ科 Legminoceae

サイカチ属 Gleditsia

学名

Gleditschia japonica Mig.

英名

Japanese honey locust

和名の由来

古名の「西海子」(さいかいし)から変化した。

学名の由来

Gleditsia 18世紀のドイツ植物学者Gleditsch氏に因む。Japonica 日本の。

木の特性

分布

日本固有種。本州、四国、九州に自生。

形態

落葉高木。雑居性。

樹皮は皮目が多いが、老木では縦に割れ目が入る。幹は直立し、15m程になる。幹や枝には分枝した刺が多数ある。

葉は1-2回の偶数羽状複葉、長さ30㎝。小葉は2㎝ほどの長だ円形、6-12対がある。

同じ株に雄花、雌花、両生花がつく。雄花序の雄花はやや小さく花数は3-5個が集まり、雌しべはない。雌花序では雌花が1個ずつまばらに付き、不稔の雄しべがある。初夏に長さ20㎝の総状花序をつける。

がく片は4、花弁は4、黄緑色、だ円形。雄しべは8、雌しべは1。

秋には曲がりくねった、長さ30㎝の灰色の豆果を付ける。莢には数個の種子が出来る。種子は大きさ1㎝ほど。

特性

木部はモリサカキジン(フラボノイド)、莢、種子はグレジチアサポニン、スティグマステロール、βーシトステロール、葉にトリアカンチン(プリンアルカロイド)、とげにフェノール性物質、タンニンを含む。

辺材は黄白色、心材は微紅色で肌目は粗く、特別な光沢をもち、気乾比重は0.65~0.75で、やや重硬で、強い。

割れにくく、心材は耐朽性があり、切削加工はやや難しい。

サイカチ6

生薬

生薬名

皂莢 神農本草経(下)はトウサイカチ Gleditsia officinalia

使用部分

果実 刺 種子

採集時期・方法

10月頃、黒みを帯びて、良く熟した莢を採取し日干しにする。熟した莢の中の豆を取りだし、熱湯をくぐらせてから日干しする。幹に有る刺を集めて乾燥

撰品

充実して大きいもの。

主な薬用成分

サポニン

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―皂角刺 豆科植物皂莢 Gleditzia sinensis Lam.的乾燥棘刺

漢方例

皂莢丸(金)、托裏消毒飲(万病回春、外科正宗)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

皂莢(果実の莢)には去痰・排膿・利尿・抗炎症の作用があり、腫れもの・扁桃腺炎・皮膚疾患の初期などに用いる。

また、腫れものに刺(皂莢刺)種子(皂莢子)を使用する。 日本の民間療法でも種子やとげを腫れものに使用する。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

別名カワラフジノキ。

園樹、公園樹として利用、材は建築材、器具材、箱類、杵、寄木細工、新炭材、葉は食用、豆は薬用のほか、サポニンを含むので泡立ちがよく洗濯用に用いられていた。とげは利尿、解毒剤に用いられる。本種は寿命が長く樹齢数百年の古木もある。

豆果の種子と莢、刺は生薬とする。

サポニンを含むので莢は洗剤として利用された。別名「石けんの木」とも言われる。

若芽、若葉は食用とする。

樹皮は染料。

サイカチの種子は硬く、種皮が傷つかないと水を吸収しないのでそのままでは発芽できない。この樹に日本最大のマメゾウムシ科のサイカチマメゾウムシ(ハムシ科に近縁)が寄生し、果実に産卵する。幼虫は種皮を破って内部に入るが、この時期にまとまった雨が降ると、幼虫は中で溺死するが、種子は給水して発芽する。この時に雨が降らなければ中味を食べてさなぎが成虫となり羽化する。

この種では豊富な樹液が滲出するので、カブトムシやクワガタなどの樹液食昆虫の食樹となる。

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No.34 ネムノキ

ネムノキ4

科・属名

マメ科

ネムノキ属

学名

Albizzia julibrissin Durazz.

英名

Silk tree, silk flower, pink siris, Persian silk tree, Pink siris, Lenkoran acacia, Bbastard tamarind, Mimosa

和名の由来

対になっている小葉が夜になると合わさり睡眠をする形なることに由来する。

学名の由来

Albizzia 18世紀にネムノキをヨーロッパに紹介したイタリア人Albizzi氏の名に因む。Julibrissin 東インドの地名。

木の特性

分布

中国、台湾、朝鮮半島、南アジアに分布。

日本では本州、四国、九州にある。

形態

落葉高木。

樹皮は灰緑色、老木になると縦の割れ目が出来る。枝はなめらかで横に広がる。

葉は偶数2回羽状複葉、30㎝、羽片は6-12対。小葉は長だ円形、18-29対、長さ10㎝ほど。葉は夜間と降雨の時に小葉を畳んで閉じて下を向く(オジギソウは触ると閉じる)。

花は葉腋から生じた花序軸の先端に集まって密に咲く。日没前に開花し、一日花だが、次々に夏の間ずっと咲き続ける。

花弁は小さく、基部は合着する。がく片は3㎜で筒状。3㎝ほどの長さの雄しべが多数集まり、花糸の先端は薄紅色、基部は白色、絹糸状に見える。

雌しべは1、白色で雄しべより長い。

果実は扁平で茶色の豆果、20㎝程度。

種子は数個が出来る。

花に来訪するのは甲虫、蝶など。

特性

樹皮はタンニン、トリテルペン配糖体juribrosideA1~A4, B1, C1, Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、葉はケルセチン、ビタミンC、種子にアルビジンを含む。樹皮の煎汁には陣痛促進作用がある。黒焼きを飲むとめまいに効果があると言われている。

辺材は黄白色、心材は暗黄褐色~淡褐色で、木理が荒く、軟らかく粘りが強い。材の気乾比重は0.5~0.6程度で、やや軽く軟らかである。

ネムノキ5

生薬

生薬名

合歓 神農本草経(中)もネムノキAlbizia julibrissin Durazzで同じ

使用部分

樹皮、花

採集時期・方法

樹皮 7月から8月頃、樹皮を採取し、日干しする。花 夏、開花した花を晴天の日に取り、時に及んで、晒乾する。

撰品

樹皮 なるたけ大きい破片。

主な薬用成分

樹皮 サポニン、タンニン

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  漢方製剤  ―

  中共薬典  ―豆科植物合歓 Albizia julibrissin Durazz.的乾燥樹皮

アーユルヴェダー―

薬性・薬味

甘、平

応用・利用

解鬱・消腫・止痛の作用があり、うつや怒り・不眠・不安・焦燥などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹、街路樹、日よけ樹として植栽。材は建築材、器具材として利用。葉は抹香に使われる。また生葉をついて洗濯に使われていた。

は屋根板、机、桶類、箱類、斧・鎌の柄、下駄などに利用する。木はやせ地の肥料木として植えられたり、また、葉は馬や牛の飼料ともされた。種子や樹皮は薬用。

昔は仏壇に供えるお香の材料としてカツラと共に本種の葉が使われた。

蜜源植物として昆虫が利用。

種子は非常食用とされる。

条件の良くない環境でも育つので日本や北米などでは侵略的有害植物となりつつあるが、ヨーロッパの各国では広く植栽されている。

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No.35 ハズ

ハズ2

科・属名

トウダイグサ科 Euphorbiaceae

ハズ属 Croton

学名

Croton tiglium L.

英名

Croton seed、Croton,Rushfoll, Purging croton

和名の由来

巴豆でハズ。中国名に基づく。

学名の由来

属名Crotonはトウゴマのギリシャ語で、ダニから来た語で種子が似ていることによる。種小名tigliumはモルッカ諸島ティグリス産を意味する。

木の特性

分布

熱帯アジア(インド、ニューギニア、ジャワ、インドネシア)、中国、フィリピン諸島に自生。

西インド諸島で広く栽培。

形態

常緑低木。

葉は葉柄があり、卵形、葉縁には僅かにきょ歯がある。

花は頂生し、総状花序にまばらにつく。単生花。雄花にはがく片5,それぞれに淡黄色の腺を持ち、花弁5、雄しべ10-20、花糸は細い。

雌花はがく片のみで花弁はない。無柄の心皮には星状毛を生じ、花柱は細い柱頭に続く。

子房は3室。

果実はさく果、種子が1個ずつ生じる。

特性

種子はクロトン酸、チグリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸のグリセリドを含む。

また、クロトノシド、クロトンアルブミンを含む。種子から得られるハズ油は毒性が強く、少量で強い下痢、皮膚の発赤を起こす。

材は白色で、木理は緻密。

ハズ

生薬

生薬名

巴豆 神農本草経(下)はハズCroton tiglium L.で同じ

使用部分

種子

採集時期・方法

秋、果実が成熟した時採取し、殻及び内皮を去り、仁のみを用いる。

撰品

子実の皮と中身の間に隙間のない充実したもの。

主な薬用成分

脂肪油(クロトン油)

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―大戟科植物 巴豆 Croton tiglium L.的乾燥成熟果実

漢方例

走馬湯(金)、紫円(千金方)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

峻下・逐水作用があり、嘔吐剤・下剤として、便秘や腹痛・腹水などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

別名ハズノキともいう。日本でクロトンと呼ばれる植物は近縁のクロトンノキ属でヘンヨウボクと呼ばれる観葉植物。

種子にハズ油などの物質を含み、薬用。

古代インドは自生地であるが、この薬効については未知であり、中国で最初に生薬として用いられたようである。

16世紀にヨーロッパに伝えられ、イギリスでは種子油が19世紀中頃まで街路用灯油として使われた。

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No.36 ダイダイ

ダイダイ

科・属名

ミカン科 Rutaceae

ミカン属 Citrus

学名

Citrus aurantium L.

英名

Sour orange

和名の由来

「代々」をダイダイと読んだ。冬に熟した果実が年を越しても落果せずに2-3年は木に残っていることに基づく。

学名の由来

Citrus  古くからのレモンの木の呼び名。種小名aurantiumは橙黄色を意味する。

木の特性

分布

インド、ヒマラヤ原産。

日本へは古く中国を経て渡来。

形態

常緑小高木。

枝には側枝の第1葉が変化した刺がある。葉身は革質、長さ7㎝程度、葉柄は翼状になり葉身との間にくびれがある。葉縁は全縁、全体に油点が分布する。

初夏に芳香のある白い花が咲く。がくは杯状で小さく5裂する。花弁は5、白色。雄しべ20-40、基部は合着。雌しべは1、子房は多室。

果実はミカン状果、ほぼ球形、子房の内壁から伸びた液質の毛が中を満たす。外果皮は厚く、多数の油細胞が分布、内果皮は海綿状、中に数個の種子を含む。果実は冬に橙黄色に熟して、2-3年は枝に残る。

種子はだ円形、中に子葉を持つ胚があり、胚乳はない。

特性

果皮はリモネン、ベルガプテン、βーカリオフィレン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ナリンギンを含む。

生薬

生薬名

橘柚・枳実 神農本草経(上・中)はCitrus aurantiumで同じ

使用部分

果皮、種子、幼果、中果皮の維管束群、葉

採集時期・方法

皮を日干する。

色・味・香り

枳実 外面は濃緑褐色~褐色。内面は表皮に接する部分は黄褐色、その他は淡灰褐色。特異な匂いがあり、味は苦い。

陳皮 外面は黄赤色~暗黄褐色。内面は白色~淡灰黄褐色。 特異な芳香があり、味は苦くて、わずかに刺激性がある。

撰品

枳実芳香性で果皮が厚く、苦味の強いものが良品 陳皮 良く乾いた橙黄色のもので、折ると芳香を放つものが良品。

主な薬用成分

陳皮ー精油(limonene),フラボン配糖体(hesperidin naringin),(synephrine) ペクチン, 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―橘皮 タチバナCitrus tachibana Tanaka

         又はその他近縁植物の成熟した果皮

  中共薬典―

処方例 ―枳実として、平胃散(和剤局方)、

     陳皮として、半夏白朮天麻湯(脾胃論)

薬性・薬味

橘柚 辛 温 枳実  苦 寒 陳皮  辛苦温

応用・利用

健胃・鎮咳・去痰・理気作用があり、食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果皮を薬用にする。果実を正月の飾り用に用いる。花、果皮から精油を採取。ダイダイ酢、ダイダイ湯を作って飲料とする。 果実は苦みと酸味が強く生食には適さない。

漢薬として果皮、未熟果実などを用いる。

果汁は酸味と風味からポン酢の材料とされる。

植物全体から精油を採取する。

正月飾りに鏡餅の上にダイダイをのせるのは語源の「代々」から「代々栄える」という縁起を担いだもので、ミカンなど他の柑橘類で代用するのでは意味がない。

別名「回青橙」(かいせいとう)と呼ばれる。これは最初に緑色の果実が成熟すると橙色になるが、果実は落果しないで翌年まで残る。前年の果実は翌年の夏には再び緑色になり、また冬には橙色に変わる。この為「回青橙」(日本語の古語では緑は青という)と呼ばれた。この様に同じ木に新旧の果実が同時になる事で「代々」続くことを佳しとした。

橙が「ダイダイ」と呼ばれるようになったのは鎌倉・室町時代以降で、それ以前は「阿部橘」(アベタチバナ)と呼ばれた。「阿部」は現在の奈良県桜井市阿部で、「阿部で採れる橘」の意らしい。

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No.37 ナツミカン

ナツミカン

科・属名

ミカン科 Rutaceae

ミカン属 Citrus

学名

Citrus natsudaidai Hayata.

英名

Natsudaidai orange, Japanese summer orage

和名の由来

本来は夏代々(なつだいだい)と呼ばれていたが、明治になって上方で流通するようになってから「夏ミカン」と呼ばれるようになった。

関西では中風(脳血管障害により身体が付随になる病)の事を「ヨヨ」と言い「代々」が「ヨヨ」とも読めることから、「夏代々」を食べると中風になるという俗説が流布した。この為に夏ミカンの売り上げが落ちたことから大阪商人がこの名を改めるように奨めたという。別名夏柑,甘夏。

学名の由来

Citrus レモンの木の古名 Natsudaidai 和名のまま。

木の特性

分布

ボンタンの自然雑種で南方から漂着した果実の種子を山口県青海島で栽培した栽培品種。<詳しく見る>

形態

常緑小高木。

枝は大きく広げる。葉は厚く、薬10㎝の長卵形、葉柄には翼がある。葉縁には細かいきょ歯があり、腺点が多い。

花は5月ころ、枝先の葉腋に白色の花をつける。花弁5、やや厚みがある。がく片5.雄しべは多数、雌しべは1。

果実は直径15㎝ほど、扁球形で果皮は厚い。

特性

果実は精油として、d-リモネン、αー、βーピネン、αーテルピネン、βーコパエン、リナロール、及び不ラバン配糖体のナリンギン、ネオヘスペリジンを含む。果皮は(4S,6S)-6-O-β-D-glucopyranosyl-p-menth-1-en-3-oneを含む。

果皮油から得られたクマリン誘導体aurapten, umbelliferonに抗ガン作用が見出されている。

生薬

生薬名

橘柚 枳実 神農本草経(上・中)はCitrus natsudaidai Hayataで同じじ

使用部分

果皮、種子、幼果、中果皮の維管束群、葉

採集時期・方法

皮を日干する。

色・味・香り

ダイダイと同じ

撰品

ダイダイと同じ

主な薬用成分

陳皮ー精油(limonene), フラボン配糖体(hesperidin naringin),(synephrine ),ペクチン, 有機酸

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―橘皮 タチバナCitrus tachibana Tanaka

       又はその他近縁植物の成熟した果皮

処方例:  ―枳実として、平胃散(和剤局方)、

       陳皮として、半夏白朮天麻湯(脾胃論)

薬性・薬味

橘柚 辛 温 枳実 苦 寒

応用・利用

健胃・鎮咳・去痰・理気作用があり、食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実を食用、果皮を薬用として利用。果皮の圧搾によって得られるオレンジ油は、飲料及び食品香料として利用される。

漢薬として果皮を用いる。

江戸時代に中国大陸南部から海流に乗って山口県長門市の青海島に漂着した柑橘類(文旦系)の果実の種子を蒔いて育てたものがはじまりと言われる。その後萩に移植され、ユズの代用として利用されていた。幕末のころに、たまたま夏に収穫したら美味であったことから「ナツダイダイ」と呼ばれ、夏の食用柑橘となった。

明治時代に入って、萩の旧武士は生活が困窮し、これを経済的に助けるためにナツミカンの栽培を奨励した。ひと頃は町一面にナツミカンの花の香りが広がっていた程萩での栽培は盛んであった。

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No.38 カラタチ

カラタチ

科・属名

ミカン科 Rutaceae

カラタチ属 Poncirus

学名

Poncirus trifoliata (L.) Raf.

英名

Orange jasmine、hardy orange、trifoliate orange

和名の由来

唐から来た橘という意味。唐橘(からたちばな)が短縮されてカラタチ。果汁の利用価値が劣ることからゲス(下酢)またはゲスの別名もある。

学名の由来

Poncirus フランス語のponcire、即ちシトロンの1種の名前に基づく)Trifoliata 3葉の。

木の特性

分布

原産地は中国、長江上流。

日本へは8世紀ころに伝わった。

ミカン類のなかでは最も耐寒性が強く痩せ地でも育つ。

形態

落葉小高木。

枝は緑色、扁平で稜角があり、短枝の変化した鋭い刺がある。

葉は互生、3小葉で各小葉はだ円形、葉縁には細いきょ歯、葉柄には翼がある。

春、葉が展開する前に白色の花を開花、3㎝ほどの大きさ、花弁の5基部は徐々に細くなる。雄しべ多数は基部で合着。雌しべ1,合生心皮。

果実はミカン果、3㎝ほどの球形、初夏に緑色、秋に黄熟する。

果実は種子が多く、酸味、苦みがあり、生食には適さない。花も果実も芳香を出す。果実は落果が早い。 ミカン科の1属、1種。

特性

果実に配糖体のナリンギン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、ボンギリンを含む。花はリモネン、カンフェン、リナロール、メチルアントラニレイト、エステル類を含むが、工業的採油は行われていない。

果実のフラボノイド配糖体ポンシリンには抗炎症作用がある。

カラタチ果実を含む漢方薬から抗ガン性を示す成分が単離されている。

生薬

生薬名

橘柚 枳実 神農本草経(上・中)はPoncirus trifoliate Rafinで同じ

使用部分

果皮、種子、幼果、中果皮の維管束群、葉

採集時期・方法

皮を日干する。

主な薬用成分

陳皮ー精油(limonene),フラボン配糖体(hesperidin naringin), (synephrine )  ペクチン,有機酸

公定書

日本薬局方 ―

局外生規  ―橘皮 タチバナCitrus tachibana Tanaka

       又はその他近縁植物の成熟した果皮

漢方例

枳実として、平胃散(和剤局方)、陳皮として、半夏白朮天麻湯(脾胃論)

薬性・薬味

橘柚  辛 温 枳実  苦 寒

応用・利用

健胃・鎮咳・去痰・理気作用があり、食欲不振・嘔吐・咳嗽・去痰などに用いる

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果肉には精油を含み、果汁には酸味が強く、苦みもあり、食用とは成らない。

刺があるので生け垣に用いられる。果実は薬用。

実生の成長は早く結実期に達し、病気に強いことから生食用ミカン類の台木とされるが、ユズや夏ミカンの台木より寿命が短いのが欠点。

アゲハチョウの食樹。

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No.39 サンショウ (別名 ハジカミ)

サンショウ

科・属名

ミカン科 Rutaceae

サンショウ属 Zanthoxylum

学名

Zanthoxylum piperitum (L.)DC

英名

Japanese pepper, Japanese prickly ash

和名の由来

山椒(さんしょう)。椒は香ばしいの意。

別名ハジカミはサンショの古名であるが、ショウガが渡来するとハジカミと呼ばれたので、サンショウを「フサハジカミ」(果実が房状になる)「ナルハジカミ」(果実がなる)などと呼んで区別した。「かみ」はニラの古名「かみら」に基づくが、「辛い」の意がある。

学名の由来

Zanthol黄色の意。xylumは材の意。材が黄色ことから。Piperitum コショウのような。果実が辛い。

木の特性

分布

日本(北海道から屋久島)、朝鮮半島南部。

落葉樹林の傾斜地などで日当たりが良く、見津はけの良い、腐葉土の多い越えた地味の所を好む。

形態

落葉低木。雌雄異株。

樹皮は灰褐色、刺やコルク質のいぼ状突起がある。時には樹高5mにもなることがある。

若枝は緑色から赤褐色、鋭い刺が2個対生する。

葉は互生、奇数羽状複葉、長さ15㎝程。小葉は5-9対、だ円形、葉縁はのこぎり状きょ歯、葉裏は白緑色。

春に開花、枝先に直径5㍉ほどの黄緑色の花を多数つける。がく片と花弁の区別はない。雄花には花被片が5-9、雄しべは4-8。雌花の花被片は7-8、子房は2(-3)、花柱は離生。

果実は分果、5㎜ほどの球形で、夏の終わりころにできる。始めは緑色、晩秋に赤く熟す。

裂開する果実の中には黒い光沢のある種子1個がある。

本種はイヌザンショウに似るが、これは芳香がなく、刺が互生する点で区別する。

特性

果実はテルペン類のジペンテン、シトロネラール、リモネン、ゲラニオール、辛み成分としてαー、βーサンショウオール、サンショウアミド、けいれん毒を有するキサントトキシンのほか、キサントトキシン酸、タンニン、フラボノイドのヒペリンを含む。

材は辺心材ともに淡黄色から黄色を呈し、時に紅色を帯びている。辺心材の区別は不明瞭で、年輪もやや不明瞭。

肌目は緻密で、硬く粘りが強いので、杖、すりこぎなどに用いられる。気乾比重は0.7~0.8程度で折れにくい。

生薬

生薬名

蜀椒 神農本草経(下)はサンショウZanthoxilum piperitum DC.で同じ

使用部分

果皮

採集時期・方法

8月下旬、果実が黄色く、色ずきはじめ、あまり熟さない果実を摘み取り、陰干しして、果柄や種子を除いて、果皮だけを集める。 夏から秋、葉を採取し、日干しする。

色・味・香り

辛、 温

撰品

種子及び果柄などの異物が少なく、新鮮で香り強いもの。

主な薬用成分

精油 辛味成分 タンニン 色素(xanthoxylin)

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

山椒として、大建中湯(金)、当帰湯(千金方)

薬性・薬味

辛 温

応用・利用

熱薬。止痛・駆虫作用があり、消化不良・胃内停水・腹痛・嘔吐・咳嗽・関節痛・下痢・歯痛・陰部の痒み・回虫症などを改善する薬方に 配合される。

民間療法 日本ではねんざ 打ち身に生の葉をすりつぶし、患部に貼って、ガーゼをあてておく民間療法がある。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

材は堅いので、すりこぎなどの器具材、果実を佃煮、果皮は粉末にして香辛料とする。

若葉, 若芽、花を食用にする。漆かぶれに果皮の煎汁を塗布するとよく、またひび、あかぎれには温湿布すると効果がある。若葉、若芽、花、果実を薬用に用いる。雄花は「花山椒」とされる。

果皮に含まれる成分のサンショオールは毒性があり、東北地方などで果皮を煮たものを川に流して魚を捕ることも行われた。また、宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」にはサンショウの幹の皮を剥いでよくつき、木灰と混ぜて袋に入れて川の水のなかでもみだすと魚が浮いてくることが記されている。

アゲハチョウの食樹。

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No.40 フユザンショウ (別名 ウダンザンショウ,チクヨウショウ,オノザンショウ)

フユザンショウ1

科・属名

ミカン科 Rutaceae

サンショウ属 Zanthoxylum

学名

Zanthoxylum armatum DC. varsubtrifoliatum (Franch.) Kitam

英名

Thoothache tree, Hercules's club、winged pepper tree

和名の由来

常緑で冬でも葉が落ちないことから。

学名の由来

Zanthoxylum zantho 黄色の+ xylum材 Amatu amarus 黒色の Subtrifoliatum  やや3出葉の傾向をもつ。

木の特性

分布

日本(関東以西、沖縄)、朝鮮半島、中国。

湿った岩や崖に多い。

形態

常緑低木。雌雄異株。

若い樹皮は明緑色、古くなると灰黒色、刺やいぼ状の突起が成長して大きくなる。

葉柄の基部の茎に赤褐色の刺が対生。葉は光沢があり、革質、羽状複葉、小葉は3-7。複葉の中軸には翼、刺がある。葉の裏面には僅かに毛がある。

初夏に葉腋から小さな花序を出す。淡黄色。花被片は8、退化した雄しべ8が雌しべ1を囲む。柱頭は2裂する。日本では雄株は知られていない。

果実は2分果、秋に赤く熟し、表面にいぼ状の突起がある。大きさは直径5㎜程度。

種子は黒色で光沢がある。

特性

果実はキサントプラニン、根はアルカロイドのジクタミン、スキミアニン、マグノフロリン、キサントプラニン、ジクタムニンを含む。

根を竹葉椒根といい、頭痛、風邪、打撲傷、歯痛などに用いる。葉に香りが少ないことから香辛料としてはあまり用いられない。

フユザンショウ2

生薬

生薬名

秦椒 神農本草経(上)はフユザンショウZanthoxilum alatumで同じ

使用部分

根 茎葉

採集時期・方法

茎葉を日干しにする。

撰品

種子及び果柄などの異物が少なく、新鮮で香り強いもの。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

漢方例

山椒として、大建中湯(金)、当帰湯(千金方)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

去風湿・止痛の作用があり、間背痛・下腹萎弱を改善する薬方に用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

アゲハチョウの食樹

中国では根、根皮、葉、果実、果皮を生薬とする。

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No.41 ゴシュユ (別名 ニセゴシュユ)

ゴシュユ

科・属名

ミカン科 Rutaceae

ゴシュユ属 TetradiumまたはEvodia

学名

Euodia rutaecarpa Bentham,異名 Tetradium ruticarpum (Juss.) T.G.Hartley

英名

Euodia, Evodia,Bee bee tree

和名の由来

漢名の呉茱萸(ごしゅゆ)をそのまま用いている。

学名の由来

Tetradium tetreは4の意。Ruticarpus rutiはヘンルーダ(オランダ語のミカン科のような)+ carpus果実。

木の特性

分布

国中-南部に自生。

江戸時代、亨保年間に渡来、日本では薬用として栽培。

形態

落葉小高木。雌雄異株。

葉は対生、長さ30㎝程度、奇数羽状複葉で5-9枚の小葉を付ける。葉縁は全縁。葉柄、葉軸に軟毛を生じる。

夏に緑白色の花を付ける。枝先に集散花序を付け、花序軸には褐色毛を密生する。がくは釣り鐘状で浅く5裂、小さい。花弁5枚、緑白色、長さ約4㎜。雄花には1㎜ほどの雄しべ5,中心に短毛が密生する花盤がある。雌花は小さい雄しべ4,雌しべ1がある。

果実は朔果、扁球形、赤く熟す。赤褐色で油腺があり、味は辛く、苦みがあり、特異な異臭をもつ。

種子はだ円形、光沢があり、黒色。

日本では雄株は希。

地下茎でよく繁殖する。この為日本では雌株が増えて今日に至り、花が咲いても種子を作らない。

特性

果実はインドールアルカロイドのエボジアミン、デヒドロエボジアミン、ルテカルピン、ヒゲナミン、エポカルビン、シネフリンのほか、ゴシュユ酸、モノテルペンのオシメン、苦味成分としてリモニンを含む。

果実の水抽出物中のセイネフリンはラット子宮のセロトニンによる収縮に拮抗する。ルテカルピン、デヒドロエボジアミンはラット子宮を収縮させる。

果実には気分を落ち着かせたり、痛みをとめたりする働きがある。

生薬

生薬名

呉茱萸 神農本草経(中)はゴシュユEvodia rutaecarpa Benthamで同じ

使用部分

未成熟果実

採集時期・方法

未熟果を急速に乾燥する。枝葉果梗などの雑質物を除く。

色・味・香り

外面は暗褐色~灰褐色。特異な匂いがあり、味は辛く、後に残留性の苦味がある。

撰品

なるべく軸が少なく、良く乾いていて、香の強いもの。

主な薬用成分

アルカロイド(evodiamine),精油(evodene limonin evodol),Cyclic GMP

公定書

日本薬局方 ゴシュユ EVODIAE FRUCTUS

      ゴシュユEvodia rutaecarpa Bentham又は

      E.officinalis Dode(Rutaceae)の果実

局外生規  ―

中共薬典  呉茱萸FRUCTUS EVODIAE

      芸香科植物呉茱萸Evodia rutaecarpa Bentham 或

      石虎Evodia rutaecarpa Bentham var.bodineeri(Dode)Huang

      的乾燥近成熟果実

漢方例

呉茱萸湯(傷)、温経湯(金)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

散寒・止痛・止嘔作用があり、嘔吐・頭痛・腹痛などを改善する薬方に配合される

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

江戸時代享保年間に日本に渡来して、薬木として各地に植栽された。

葉、未熟や成熟果実を生薬とする。からだを温める働きがあり、浴湯料として用いられる。

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No.42 キハダ

キハダ2

科・属名

ミカン科

キハダ属

学名

Phellodendron amurense Rupr.

英名

Amur corktree

和名の由来

樹皮の内側は鮮やかな黄色であることから。

学名の由来

Phellodendron phellos コルク質の+ dendron 樹木。Amurense アムール川流域の。

木の特性

分布

日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮半島、中国(北部、東北)、アムール川、ウスリー川流域。

日本各地の落葉樹林帯に自生。

形態

落葉高木。雌雄異株。

外樹皮は淡黄灰色、その内側の厚いコルク質は淡黄色。コルク質の内側の層も鮮黄色。コルク質が盛り上がり、縦に割れ目が入り凹凸が目立つ。樹皮の様子は成長に伴って変化する。若い枝は無毛。

葉は対生、20㎝前後、奇数羽状複葉、小葉は5-10でだ円形。

初夏にかけて散房花序に黄色の花を付ける。がく片5,花弁5。雄花には雄しべ5、退化した雌しべ。雌花には退化した雄しべと雌しべ1。子房は5室。

果実は液果、1㎝の球形、始めは緑色、熟すと黒色。精油を多く含み、固有の臭いがある。

特性

樹皮はアルカロイドのベルベリンのほか、パルマチン、マグノフロリン、グアニジン、フェロデンドリン、メニスベリン、苦味物質としてオバキュノン、リモニンを含む。ベルベリンは強い抗菌作用を持つ。

辺材は灰白色心材は灰黄色で気乾比重は0.47。狂いが少なく硬く、加工性がよく、光沢が美しい。机、書棚、洋箪笥などに用いられる。

キハダ3

生薬

生薬名

蘗木 黄柏,キハダ Phellodendron amurense Ruprecht 神農本草経(中)も同じ

使用部分

樹皮

採集時期・方法

6~7月(特に夏至前後)樹皮をはぎとり、コルク層を取り除く。中に有る内皮の黄色い部分を日干しにして乾燥させる。

色・味・香り

弱いにおいがあり、味は極めて苦く、粘液性で、だ液を黄色に染める。

撰品

厚みがあって、鮮黄色で苦いもの。

主な薬用成分

アルカォイド(berberine) 苦味成分(obakunone) ステロール(sitosterol)

公定書

日本薬局方 ―42.キハダ Phellodendron amurense Ruprecht

       又はP.chinense Schneiderの周皮を除いた樹皮である。

 局外生規:― 

 中共薬典  芸香科植物 黄皮樹(川黄柏)Phellodendron chinense Schneid.或

       黄蘗(関黄柏)Phellodendron amurense Rupr.的乾燥樹皮―

漢方例

黄連解毒湯(外台秘要)、白頭翁湯(傷)

薬性・薬味

苦、寒

応用・利用

消炎・健胃・整腸・抗菌の作用を持ち、止瀉・消炎の要薬

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

地方によっては「きわだ」と呼ぶ。

は樹皮からの外樹皮、コルク質を用いる。主な薬効成分はベルベリン。正露丸などの胃腸薬に利用されている。売薬「陀羅尼助」は42.キハダの樹皮にアオキの葉を加えて水で煮出した汁を煮詰めた水性エキスで、おなかの痛みどめや洗眼に使われる。

アイヌは熟した果実を香辛料とした。熟した果実は、甘くて苦いが、果実酒とする。

樹皮は黄蘗色(きはだいろ)という黄色の染料とした。

カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハの食樹。

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No.43 ミヤマシキミ

ミヤマシキミ

科・属名

ミカン科 Rutaceae

ミヤマシキミ属 Skimmia

学名

Skimmia japonica Thunb.

和名の由来

葉がシキミに似て、山に自生する。自生地は深山とは限らない。「アシキミ」の「ア」が取れてシキミとなったともいわれる。

学名の由来

Skimmia 和名「シキミ」に基づく。Japonica 日本の。

木の特性

分布

日本(本州の関東以西、四国、九州)。台湾に分布

低山の林床に生える。

形態

常緑低木。雌雄異株。

ミカン科であるが、茎には刺がない。

幹は直生し、まばらに分枝する。若い枝は緑色、古くなると灰色。

葉は互生、長だ円形、葉縁は全縁、表面は光沢があり、茎の先端部位に集まる。油点がある。葉にはアルカロイドがあり有毒、鹿など草食動物も食べない。

花は春に枝先に円錐花序をつける。花の直径は1㎝、白色の花弁は4(-5)、まばらに油点。雄花には雄しべ4、退化した雌しべ1。

雌花は雄花に比べて数が少なく、雌しべ1の柱頭は浅く5裂し、退化雄しべが4。

花には芳香がある。

果実は秋から翌春にかけて熟し、核果、赤色、有毒。

種子は1個。

特性

有毒植物。葉はアルカロイドのスキミアニン、スキミンを含む。殺虫作用があり、農業用殺虫剤として用いられる。

誤って食べれば嘔吐、下痢、手足のまひ、けいれんが起こる。

生薬

生薬名

茵芋 神農本草経(下)は黄山桂 Skimmia reevesiana Fortune

使用部分

茎、葉

採集時期・方法

年間を通じて、採取がで、き日干しにする。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、温

応用・利用

去風湿・止痛の作用があり、関節痛・下腹萎弱に用いる。

その他

大量に服用すると、血圧低下・心臓麻痺を引き起こし、死亡することがある。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

冬に果実が赤いので観賞用とする。

縁起ものの植物として正月などに飾られるものに「○○両」と呼ばれるものがあるが、全て冬に赤い果実を付ける。本種は「億両」と呼ばれる。

因みに「一両」はアカネ科、アリドウシ属、ツルアリドオシ。

「十両」はヤブコウジ科、ヤブコウジ属、ヤブコウジ。

「百両」はヤブコウジ科、ヤブコウジ属、カラタチバナ。

「千両」はセンリョウ科センリョウ属、センリョウ。

「万両」はヤブコウジ科、ヤブコウジ属、マンリョウ。

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No.44 センダン

センダン

科・属名

センダン科 Meliaceae

センダン属 Melia

学名

Melia azedarach L.(var.subtripinnataMiq. 狭義)

英名

China berry, White cedar, bead-tree, cape lilac, Persian lilac, Indian lilac

和名の由来

栴檀 の漢名。

学名の由来

Melia ギリシャ語のトネリコ、Azedarach 毒の木の意。

木の特性

分布

アジア各地の熱帯、亜熱帯に自生。日本では四国、九州、沖縄に分布。

温暖な地の海岸、林縁に生育。

形態

落葉高木。

若い樹皮は紫褐色、小さなだ円形の横斑が点在。太い幹の樹皮は縦の割け目が目立つ。

葉は奇数2-3回羽状複葉、互生、長さは50㎝以上。小葉は薄く、だ円形、浅いきょ歯がある。

初夏に若枝の葉腋に淡紫色の5弁の花を円錐状に付ける。雄しべは10、基部は合着して筒状となる。雌しべは1、雄しべの筒内にある。

果実は2㎝、だ円形の核果、晩秋に黄褐色に熟す。葉が落葉した後も枝に残る。果実の果肉は薄く、種子が大きい。種子は5-8個。それぞれにの表面に5本の溝がある。

家畜や人間が食べると中毒し、多量だと死に至る。

特性

樹皮はタンニン、苦味物質のマルゴシン、アスカロール、クマリン誘導体のバニリン酸、のほか、カテコール、トーセンダン、センダニン、メリアノン、メリアノールを含む。果実はオレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸、ステアリン酸、メルデニン、ニンビニンを含む。

樹皮は強い殺虫作用をもち、回虫駆除の用いるが副作用もある。辺材は黄白色、心材は鮮黄褐色で、木肌は粗いが、硬く割りやすい。

材の気乾比重は0.45~0.75程度である。

センダン

生薬

生薬名

楝実 神農本草経(下)はトウセンダンMelia azedarach var. toosendan

使用部分

果実、幹

採集時期・方法

秋に黄熟した果肉を生のまま用いる。幹皮は細かく刻んで日干しにする。

主な薬用成分

melianone azaridine

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、寒

応用・利用

ひび・あかぎれ・しもやけに果肉をすりつぶして、患部に塗る。幹皮は虫下し・条虫駆除に使用する。理気・止痛・駆虫の作用があり、腹痛に用いられる。

その他

根皮には toosendamin margosineを含有する

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

「センダンは双葉より芳し」のセンダンは白檀(ビャクダン)(Santalum album L.)を指し、白檀は発芽時から芳香を発することから、優れた人物は幼時から優れていることを示すものであるが、このセンダン(M.Azedarach)とは異なる樹種である。

観賞用、街路樹など。樹皮、葉、果実は生薬。硬いが割りやすい材質を利用して腰板などの建築材、洋箪笥、机、いすなどの家具類、木魚、ラケットの柄などの運動具、琵琶の胴、下駄、寄木などに利用される。

種子は数珠珠に用いる。ひび、しもやけに生の果肉をつぶして患部に塗布すると効果がある。センダンは古い時代に罪人をさらし首にかけた樹であったことから、縁起の悪い木として庭木として植えるのを避ける風習のある地域もある。なぜ、センダンを使ったかについては、センダンに厄払いの呪術的な意味があったのではないかとの説がある。

センダンは古くはオウチ(またはアフチ)と呼ばれており、万葉集にも数種の歌が載せられている。「妹が見し楝(アフチ)の花は散りぬべし我が泣く涙いまだ干なくに」は山上憶良の作である。

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No.45 ウルシ

ウルシ

科・属名

ウルシ科 Anacarciaceae

ウルシ属 Toxicodendron

学名

Toxicodendron vernicifluum Stokes

英名

Lacquer tree、Varnish tree, Chinese lacquar tree

和名の由来

「漆」の漢字の偏(へん)は木汁が1滴ずつしたたる様子を示し、旁(つくり)の(さんずい)の水を添えたもの。ウルシをシツとするのは「津(したたる汁)」の語尾が転じたもの。

学名の由来

Toxicodendron toxicon有毒の+dendorn樹木。Vernicifluum ワニスを生じるもの

木の特性

分布

アジア原産。

中国、朝鮮半島、日本で古くから栽培。

日本には中国を経て渡来とされているが、日本の縄文時代の遺跡から漆器が出土していることから日本に自生していたとも考えられる。

1万2000年前の木片が1984年福井県若狭町の鳥浜貝塚で出土、日本最古のウルシとされる。

形態

落葉高木. 雌雄異株、時に雑居性。

樹皮は灰白色。

葉は奇数羽状複葉、長さ40センチ,葉軸は赤紫色。小葉は3-9対、だ円形、全縁。秋には紅葉する。

花は初夏、葉の展開直後に葉腋に黄緑色で、長さ30㎝ほどの円錐花序を出す。雌花は花弁5,不稔の雄しべ5,雌しべ1の柱頭は3裂する。雄花は雄しべ5,雌しべは退化。

果実は黄褐色、球形の核果、秋に成熟して黄褐色。

特性

樹液はウルシオール、ハイドロウルシオール、マンニトール、ゴム質を含む。

ウルシオールは大量に投与すると脳中枢神経系に害を及ぼす。辺材は灰白色、心材は黄色で光沢がある。

材の気乾比重は0.45~0.55程度である。

ウルシ2

生薬

生薬名

乾漆 神農本草経(上)はウルシToxicodendron vernicifluum Stokesで同じ

使用部分

乾燥した樹脂

採集時期・方法

打ち砕いて、火にかけ、煙のなくなるまで炒る。

撰品

深黒色 焼いて漆の気のあるもの。

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―

 中共薬典 ―漆樹科植物 漆樹 Toricodendron vernicifolium (Stokey)

       F.A.barkl的樹脂経加工后乾燥

漢方例

大黄シャ虫丸(金)

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

駆お血・駆虫の作用があり、無月経・腹部腫瘤・寄生虫症などに用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

樹皮に横傷をつけて樹液(生漆)を採取。樹液は漆器を塗るのに使用される。

樹液はウルシオールによってかぶれやすい。敏感な人はこの木のそばを通ってもかぶれることがある。山火事などでウルシなどが燃えた煙を吸うと気管支や肺がかぶれて呼吸困難に至ることがある。

樹液は空気中に出ると乳白色から褐色に変化する。漆は水、熱、アルカリに強く、乾くと固まる。

材は耐湿性があり、黄色で光沢があるので、寄木、小細工物、箱類、洋傘の柄などにされるほか、漁網の浮木、下駄などにされる。

果実は乾燥後、木蝋を搾取する。

新芽は味噌汁や天ぷらにして食用とするが、食べると舌に違和感が出ることがある。本来は漆職人が漆に対して免疫をつくる為に食べ始めたものである。

薬用に用いる。

ウルシは古く朝鮮半島を経て渡来し、7世紀にはすでに栽培されていた。クワ、コウゾ、茶、とともに江戸時代には産業の4木の一つとして各藩で盛んに栽培されていた。明治の初めには700トンの生産があったが、現在はほとんど栽培されておらず、ほとんどを中国、台湾、ベトナムなどから輸入している。

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No.46 ニシキギ (別名 ヤハズニシキ)

ニシキギ

科・属名

ニシキギ科 Celastraceae

ニシキギ属 Euonymus

学名

Euonymous alatus (Thunb.) Siebold f. alatus

英名

Spindle tree,Japanese winged Euonymus

和名の由来

秋の紅葉のすばらしさを錦に見立ててニシキギ。

学名の由来

Euonymus euは良い+onomaは名。「良い評判」の意。紅葉が素晴らしいところから付けられたのか。Alatus 翼がある。

木の特性

分布

日本(北海道、本州、四国、九州),朝鮮半島、中国に分布。

丘陵から産地に広く生育。明るい林内、林縁に生育。

形態

落葉低木。

樹皮は灰褐色。若い枝のころから表皮を突き破ってコルク質の翼をだす。老木になっても翼の名残が見られる。翼のないものはコマユミ。

葉は対生、細かいきょ歯があり、先端は細く尖り、密に茂る。

花は初夏、淡緑色の花弁4、雄しべ4,雌しべ1の花が多数つく。

果実は7㎜ほど、だ円形の朔果、熟すと赤紫色の果皮が割れて赤い仮種皮に被われた種子が露出。

果実食の鳥が採食し、仮種皮を消化して種子は排泄される。

特性

葉はケルセチン、ズルシトール、エピフリーデラノール、フリーデリンを含む。

枝部分を薬用として利用するほか、赤色の果実を煎じて飲むだけで、木や竹のとげが抜けると言われている。

以前には果実をつき砕いて水と油を入れて練ったものを頭髪に塗ってシラミを殺すのに用いていた。

生薬

生薬名

衛矛 神農本草経(中)はニシキギEuonymus alatus(Thunb.)も同じ

使用部分

枝に出るコルク質の翼

採集時期・方法

年間を通じて、採取して日干しで乾燥。若枝と葉を除く。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦 寒

応用・利用

活血・通経の作用があり、無月経や産後の腹痛などに用いる。殺虫 寄生虫による腹痛

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園木、公園木として観賞用として植栽される。

秋に葉が赤く紅葉する。枝のコルク質の翼、果実などを薬用。材は硬いが工作しやすく、版木、杖、弓、彫刻材、木釘 、櫛材として利用する。

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No.47 ナツメ

ナツメ

科・属名

クロウメモドキ科 Rhamnaceae

ナツメ属 Ziziphus

学名

Ziziphus jububa Mill.

英名

Jujube, Chinese date、Common jujubi

和名の由来

芽立ちが遅く、夏になって芽が出ることによる。夏芽。

学名の由来

Ziziphus アラビア名のzizionfがギリシャ語になりziphonの成ったもの。Jujuba ナツメのアラビア名。

木の特性

分布

中国、西アジア原産とされるが、正確な原産地ははっきりしない。

これは本種が古くから各地で栽培されていた事による。日本へは古い時代に中国を経て渡来。

万葉集にも詠まれていることから渡来は奈良時代以前か。

形態

落葉高木。

樹皮は灰黒色、太くなると縦に割ける。若い枝は褐紫色

側枝は時に同じ節から数本が出る。

葉は互生、長さ4㎝ほど、光沢があり三行脈が目立つ。葉の基部に鋭い刺があるのはサネブトナツメ。葉縁には鈍きょ歯がある。

花は初夏、淡黄色で小さい。がく片5,花弁5,雄しべ5、雌しべ1。

果実は長だ円形の核果、晩秋に暗紅色に熟す。

種子2個を含む。

特性

果実はオレアノール酸、オレアノン酸、マスリニン酸、ベチュリン酸、チチフサポニンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、ジュジュボシドB,チチベオシドⅠ、Ⅱを含む。

辺材は帯緑黄白色、心材は褐色で、年輪は不明瞭。木理はほぼ通直で肌目は極めて精で光沢は無い。

生薬

生薬名

大棗 神農本草経(上)はナツメZizyphus jujube Millで同じ

使用部分

果実

採集時期・方法

秋果実が成熟した時、狭雑物を取り、日干しする。または皮が柔らかくなるまであぶり、再度乾燥する。

色・味・香り

外面赤褐色、または暗灰赤色。弱い特異なにおいがあり、味は甘い。

撰品

新鮮で肥大し、うるおいがあり、甘みが強いものが良い。

主な薬用成分

isoquinoline トリテルペノイド化合物、zizyphusサポニンⅠ、Ⅱ、多量の糖分、中性・酸性多糖類。

公定書

日本薬局方 本品はナツメ Zizyphus jujube Mill

          var.inermis rehderの果実である。

  局外生規 ―

  中共薬典 鼠李科植物 棗Zizyphus jujube Mill.的乾燥成熟果実

漢方例

甘草麦大棗湯(金)、苓桂甘棗湯(傷)

薬性・薬味

甘、温

応用・利用

気力を増し、津液を生じ,営衛を調える。食欲不振・倦怠感・ヒステリー・ぜんそくを改善する。

その他

中国各地で栽培

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

果実や生薬とされる。台湾では緑色のまま果物として食す。

果実は生食、ジャム原料、ナツメ茶、薬膳料理などに使われる。

木の葉を噛むと葉に含まれるジジフィンが舌の甘味センサーをブロックして甘味を感じなくなる。

果実、種子は薬用。強壮、利尿に用い、核には鎮痛、鎮静作用があり、不眠症に用いると効果を発揮する。

観賞用の庭木、街路樹などに植栽。

茶器の棗は果実の形を模した。

果実は「桃、栗3年、杏は4年、梨は5年、棗はその年、金になる」と言われ、経営上有利な果物として重んじられた。この為多くの改良種がつくられた。

果実の味はリンゴに似る。

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No.48 ヤマブドウ

ヤマブドウ

科・属名

ブドウ科 Vitaceae

ブドウ属 Vitis

学名

Vitis coignetiae Pulliat ex Planch.

英名

Crimson glory vine

和名の由来

山に自生する葡萄。葡萄は西暦元年のころに中央アジアに繁栄した「大宛国」(だいえんこく)の呼び名「budaw」或いはギリシャ語の「Botrus」に由来、中国を経由して現在の葡萄となった。

学名の由来

Vitis ギリシャ語のvieo 結ぶの意。Coignetiace  coignitus 著名なるの意から。

木の特性

分布

北海道、樺太、本州中部以北、四国の高山に分布。

形態

つる性落葉低木。雌雄異株。

古木の樹皮は縦に裂け、薄く剥がれる。髄は褐色。若い枝や葉には褐色毛がある。つるは葉と対生する巻きひげで他の植物などに絡みついて高く登る。巻きひげは全ての葉と対生することは無い。

葉は30㎝ほどで互生、葉身基部が心形となり、全体は5角形。葉の裏面には褐色の綿毛があり、秋に紅葉する。

花は初夏、葉と対生して円錐花序に、黄緑色の小さい花を多数付ける。がくは輪形、花弁は5.花弁が開花するとき花弁の頂端部が合着したまま、帽子を脱ぐようにして落ちる雌花は不稔の雄しべと稔性のある雌しべを備え、雄花は不稔の雌しべと稔性のある雄しべを持ち、花粉の送粉者としての役割のみを果たす。果実は雌株にのみ稔る。

おしべ5,雌しべ1.野生種は栽培品種とは異なり、1株では結実しない。

果実は液果、球形、秋に黒紫色に熟す。

特性

果汁は酒石酸、ブドウ糖、果糖、ビタミンB1,Cを含む。

根皮をすって粉末にしたものをできものに塗布すると効果がある。

ヤマブドウ2

生薬

生薬名

葡萄 神農本草経(上)は ヤマブドウ Vitis viniferi

使用部分

果実

採集時期・方法

果実 成熟時に採取し、陰干しする。 根・つる 10~11月に採取し、日干しか其のまま使用。

主な薬用成分

タンニン、糖類(ブドウ糖・果糖、その他少量のショ糖・キシロース、有機酸(酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸)、色素(各種アントチアン類)、その他(各種ビタミン、カルシウム、など)

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

甘、平

応用・利用

気血の衰弱、肺虚の咳嗽、排尿痛、浮腫、動悸、ねあせ、民間療法で根・つる 9~15gを半身不随に使用する。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

古名をエビスカズラと言い、ヤマブドウの果実の赤紫色を葡萄色(えびいろ)と言い、日本の伝統的な色彩として、平安時代の貴族に好まれ、王朝文学にもよく登場する。

皇室では内親王が5歳になると葡萄色の袴を着る「着袴の儀」が行われる。これは民間の七五三に当たる行事である。この色のやや茶色がかったものが海老茶色である。

ブドウトックリタマバエが葉に虫頴を作る。

樹皮はなめして籠などを作る。北海道のアイヌは草履を編んで履いていた。

果実は生食、ジャム、ブドウ酒などにするほか、ブドウ酒の着色用に使われてきた。

味は甘酢っぱい。本種の果汁には鉄分が多く含まれ、優れた健康飲料である。

果実、葉、茎は染料に用いる。

若葉、若芽は初夏に採取して食用。

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No.49 ビャクレン

ビャクレン2

科・属名

ブドウ科 Vitaceae

ノブドウ属 Ampelopsis

学名

Ampelopsis japonica (Thunb.) Makino

英名

Mountain grape, Japanese pepper vine

和名の由来

根が紡錘形に肥厚し、髄が白いことで白斂(ビャクレン)。別名のカガミグサは昔、鏡を磨くことに用いられた植物の総称。ガガイモ、ダイコン、ヤマブキなどもカガミグサと呼ばれていた。

学名の由来

Ampelopsisはギリシャ語で ampelosはブドウ+opsisは外観。ブドウに外見が似るため。Japonica 日本の。

木の特性

分布

中国(東北、華北、河北、湖北、四川)に自生。

日本には亨保年間に渡来。

形態

つる性多年草。

つるは10m位伸びる。

茎、花柄、葉柄は赤みを帯びる。

葉には葉柄があり、葉身は掌状に深く切れ込み、特に羽状に深く切れ込みむ時は葉軸に翼がでる。時には2回羽状複葉となることもある。葉と対生する巻きひげがある。葉縁には荒いきょ歯。

夏に集散花序を出し、花序は葉と対生する位置に薄黄色の小さな花をつける。花弁5、雄しべ5、雌しべ1。

花期が一ヶ月と長いので花と果実を同時に見ることができる。

果実は液果、白色、紫色、青色などで、球形。

根は塊状で薬用とする。

ビャクレン1

生薬

生薬名

白斂 神農本草経(下)はカガミグサ Ampelopsis japonica Makino

使用部分

根。別名のカガミグサは昔、鏡を磨くことに用いられた植物の総称。ガガイモ、ダイコン、ヤマブキなどもカガミグサと呼ばれていた。

採集時期・方法

夏に根を取り、日乾する。

主な薬用成分

粘質・デンプン 詳細は不明。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、平

応用・利用

清熱・解毒・消癰腫・止痛作用があり、化膿症・瘰癧・やけど・痔出血などに用いる。外用には粉末を散布するか、絞り汁を塗布する。

その他

ブドウの仲間で、秋になると白・紫・青などいろとりどりの球形の液果がなり、美しいため観賞用に栽培されている。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

肥大した塊根をビャクレンと呼び薬用。

果実の色がさまざまなことから観賞用とされた。

江戸時代亨保年間に将軍吉宗は朝鮮、中国など外国産の薬用植物を多数導入して国内で栽培する中にビャクレンもあった。

これらの輸入薬用植物は幕府直轄のお薬草園、小石川お薬草園、駒場お薬草園などの栽培目録にも載っている。

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No.50 キガンピ

キガンピ

科・属名

ジンチョウゲ科 Thymelaceae

ガンピ属 Diplomorpha

学名

Diplomorpha trichotoma (Tunb.) Nakai

英名

Ki-ganpi

和名の由来

古くから樹皮が紙になるので紙斐(かみひ)と呼ばれていた。カミヒ、カニヒ、ガンピ(雁皮)へと変化した。キガンピ(黄ガンピ)で花の色に基づく

学名の由来

Diplomorpha diplo 二重の+morpha 形。Trichotoma 3分岐の意で枝が3つに分岐することによる。

木の特性

分布

日本(本州の近畿以西、四国、九州),朝鮮半島南部。

日当たりの良い、低山、丘陵地、岩場などの痩せ地に生育。

形態

落葉低木。

樹高1mくらい。樹皮は始め緑色、後に褐色-紫褐色となる。

枝は良く分枝し、当年枝は無毛、赤みを帯びる。2年目以降の枝は灰色。葉腋より少し離れた上方から対生(ガンピは互生)、樹皮の繊維は強くちぎれにくい。

葉は対生、僅かに有柄、だ円形、全縁、長さ4㎝ほど、全体が柔らかく、裏面は白色、両面は無毛。葉身の裏面の羽状脈は盛り上がる。葉は秋に黄食に色づく。

花は晩夏に咲く。当年枝の先にあつまり、長さ7㎜程度、黄白色の筒状花が10個ほどつく。がく筒の先が4裂し、花弁は無い。雄しべ8,雌しべ1。花柄は短い。

果実は紡錘形の核果。

種子は2㎜程度。

キガンピ2

生薬

生薬名

蕘華 神農本草経(下)は キコガンピ Diiploomorpha trichotoma (Thnb.)Nakai

使用部分

花蕾

採集時期・方法

5~6月の花期に採取。

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、辛

応用・利用

利水・消腫の作用があり、留飲・咳逆上気・水腫・などの症状を改善する。薬方に用いる。

その他

中国の湖南・湖北・陝西・江西・雲南 各省で栽培されている。

ジンチョウゲ科 蕘花 Wikstroemia cunescens Meissn 根を山皮条という。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

樹皮は繊維が強靱、和紙(雁皮紙)の原料になる。別種で葉が互生のコガンピは和紙にはならない。

紙質は滑らか、緻密、半透明で光沢があり、虫害、水にも強く、耐久性もある。

日本固有種であるが、全国の自生地で林道開発、森林伐採のため絶滅危惧種となっている。

栽培が困難なため製紙用には野生のものを用いる。

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No.51 サンシュユ (別名 ハルコガネバナ)

サンシュユ

科・属名

ミズキ科 Cornaceae

ミズキ属 Cornus

学名

Cornus officinalis Sieb. et Zucc.

英名

Japanese cornel, Japanese cornelian cherry , Cornelian cherries

和名の由来

漢名の山茱萸の日本語読みがサンシュユ。萸はグミの事で、秋にみのる果実がグミに似る。尚、茱萸は中国ではサンショの意。グミは赤い果実を付ける木の総称。

学名の由来

Cornus 角(つの)が語源、材質が硬いことに由来。Officinalis 薬効があるの意。

木の特性

分布

中国、朝鮮半島に自生。

江戸時代、亨保年間に朝鮮半島から薬用植物として種子が持ち込まれた。

形態

落葉小高木。高さ5mほど。

樹皮は淡褐色。

葉は対生、長さ10㎝ほど、長だ円形、両面とも有毛。羽状に走る葉脈が目立つ。

若葉の展開する前にの早春に散形花序を付け、総包片4に包まれる。

花は両性花、時に雄性花のみ、がく片4,花弁4,共に鮮黄色。雄しべ4、雌しべ1。雄性花の雌しべは不稔。

晩秋に紅色、だ円形の液果を付ける。長さ1.5㎝程度。

中に1個の種子。

特性

果実は、没食子酸、酒石酸、リンゴ酸、ウルソール酸、モロニサイド、メチルモロニサイド、ロガニン、スウエロサイド、デヒドロモロニアグリコン、5,5-ジーαーフラルデヒドジメチルエーテル、5-ヒドロキシメチルフルフラール、7-デヒドロロガニンを含む。

煎汁は利尿作用、降圧作用、抗菌作用を持つ。

材は黄褐色で重くて硬い。

材の気乾比重は0.75程度。

木理が緻密で強固だが、材はあまり利用されていない。

サンシュユ2

生薬

生薬名

山茱萸 神農本草経(中)はサンシュユCornus officinalis Sieb.etZUCC.で同じ

使用部分

果肉

採集時期・方法

秋末から冬初め、果皮が赤く成熟した果実を熱湯に通し、種子を除き、日干しする。

色・味・香り

外面は暗赤紫色~暗紫色。弱い匂いがあり、酸味があって、僅かに甘い。

撰品

種子がなく果肉ばかりで、紫黒色を呈し、甘ずっぱいもの。

主な薬用成分

イリドイド配糖体(morroniside loganin),トリテルペノイド(ursolic acid )      サポニン(cornin), タンニン(tellimagrandinⅠ・Ⅱ), 有機酸(tartaric acid)

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―

 中共薬典 ―山茱萸科植物 山茱萸 Cornus officinalis Sieb et zucc

       .的乾燥成熟果肉

漢方例

八味地黄丸(金)、六味丸(小児直訣)

薬性・薬味

酸、平

応用・利用

滋養・強壮・収斂・止血・の作用があり、足腰の痛み・めまい・性機能低下など、また汗が出過ぎる時・頻尿・夜尿などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

わが国には江戸時代享保年間に渡来した。鑑賞樹、街路樹として植栽されていて、早春に花開く。

果実の果肉は生薬。滋養、強壮、収斂などの作用があり、八味地黄丸などに利用される。果実を酒に入れて果実酒としても利用される。

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No.52 ヤマウコギ

ヤマウコギ2

科・属名

ウコギ科 Araliaceae

ウコギ属 Acanthopanax

学名

Acanthopanax supinosus (L. fil) Miq.

和名の由来

漢名「五加」の発音「ウコ」に木がついた。またヤマに生えるので、山五加木(ヤマウコギ)となった。中国にはヤマウコギはなく、五加(ウコギ)のみである。

学名の由来

Acanthopanax Akantha はギリシャ語の刺 + panaxは万能薬 (ギリシャ語pan総 + akos治療)。Supinosus 刺の多い。

木の特性

分布

本州(岩手県以南)。

丘陵、山地の林内に生育。

形態

落葉低木。雌雄異株。

樹皮は灰褐色、縦に割れ目があり、節には真っ直ぐな刺がある。若い枝は枝垂れる。

短枝と長枝があり、葉は長枝にはまばらに付き、短枝には密生する。掌状複葉、葉柄は長い。小葉は荒いきょ歯がある。両面は無毛。

初夏に短枝の先端に散形状で黄緑色の小さい花を多数つける。がく筒は釣鐘状で先端が浅く5裂、花弁5。雄花には雄しべ5,雌しべは殆ど退化。雌花には目立たない雄しべ5,雌しべ1の花柱は2裂する。

果実は液果、扁平な球状、秋に黒熟する。

特性

根皮は4-メトキシサリチルアルデヒド、パルミチン酸、アラギン酸、リノール酸、ステロールを含む。

葉は7種の3αーヒドロキシオレアナン型トリテルペンのオリゴグリコシルエステルであるスピノサイドD1,D2,D3、C1,C2,C4,C5、および 3種の3αーヒドロキシー30-ノルオレアナン型トリテルペンのオリゴグリコシルエステルのスピノサイドC3,C6、C7を含む。

ヤマウコギ

生薬

生薬名

五加 神農本草経(下)はヤマウコギAcanthopanax spinosus (L.fil.)Miqで同じ

使用部分

根皮、茎皮

採集時期・方法

夏~秋に根を掘り取り、根の皮を剥ぎ、水洗いして切片にし、日干しする。

撰品

肉厚で木部がなく、香気苦味共に強いもの。

主な薬用成分

4-methoxysalicyl aldehyde

公定書

日本薬局方 ―

 局外生規 ―

 中共薬典 ―五加科植物 細桂五加 Acanthopanax gracilistrylus w.w.Smith

       的乾燥根皮

薬性・薬味

辛、温

応用・利用

去風湿・補肝腎・強筋骨・利水の作用があり、関節痛・筋肉や腰膝のi痛み・インポテンツ・むくみ・筋力低下・脚気などを改善する薬方に配合される。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

根の樹皮を乾燥させたものには、五加皮といい、強壮、利尿、鎮痛などの薬効がある。

五加皮の煎汁に麹及び飯を加えて醸造したものを五加皮酒といい、強壮の働きがある。若い葉は食用。

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No.53 クロマツ

クロマツ

科・属名

マツ科

マツ属

学名

Pinus thunbergii Sieb.eEt Et Zucc.

英名

Japanese black pine, Japanese pine, Black pine

和名の由来

樹皮が黒いマツ。マツについては諸説がある。神を「待つ」、神を祀る、または常緑であるので、「真常木」(まとのき)、久しきを「待つ」や「保つ」などから由来。

学名の由来

Pinus タール状のものを指す。Thunbergii スエーデンの植物学者の名に因む。

木の特性

分布

日本(本州、四国、九州)、朝鮮半島に自生。

主に海岸に生育するが、耐寒性もある。

北海道にも植栽される。

形態

常緑高木。雌雄同株。

高さ40mに達するものもある。

樹皮は灰黒色、亀甲状に割れ目が入り剥がれる。枝は長枝と短枝があり、葉は短枝に2枚、側生、アカマツよりも硬く、長枝も太い。 4-5月、若い短枝の基部に多数の雄花、その枝の先に2-4個の雌花をつける。雄花はだ円形、20㎜ほど、黄色。各種鱗上に2個の薬室をつける。縦に裂開して気のうを持つ花粉を出す。風媒花。

雌花は3㎜、球形、紅紫色、種鱗には2個の胚珠があり、風に運ばれた花粉で受粉する。

雌花は1年半後に種子を成熟させ、種鱗は木化し、松かさを作る。包鱗は膜状に種子を包み翼を形成する。

種子は風散布。

特性

葉、材はテルペン類を多く含み、特に葉にはα―ピネンなどのモノテルペン類、材にはアビエチン酸などのジテルペン類を多く含む。

マツの樹幹にキズをつけると滲出してくるものが生松脂(なままつやに)で、これには揮発性のテレビンと不揮発性固体のロジンが含まれている。

テレビンはモノテルペンを主成分とし、ロジンはジテルペンを主成分とする。

辺材は淡黄白色、心材は淡褐色である。

材の気乾比重は0.5程度である。

クロマツ2

生薬

生薬名

松脂 神農本草経(上)はPinus densiflora  Sieb.etZUCC.で同じ

使用部分

松脂(マツヤニ)

採集時期・方法

幹に傷をつけ浸出した生松脂を集めて乾燥。粉にして用いる。

色・味・香り

半透明な琥珀色。

撰品

黄色か淡黄褐色の大きい塊が良い。暗色を帯びたものは不可。

主な薬用成分

精油

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

苦、温

応用・利用

痰 肩凝り 筋肉痛 打ち身

日本の民間療法では葉に滋養強壮作用があり、低血圧症 不眠症 冷え症 食欲不振 動脈硬化の予防に使用する

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹、海岸砂防林として植栽される。塩害に強いため特に、海岸近くに防風・防潮林として植栽され、海岸の景観を形づくっている。

宝飾品の琥珀は、マツヤニが数百万年を地中の圧力のもとで経過してできたものである。マツヤニには利尿作用があり、薬用にされる。

マツは松竹梅として料理などの格付けに使われたりする。本来は「歳寒三友」として中国の文人画の画題の1つであった。中国での松竹梅とは寒中でも色あせず、花開き、緑を保つ「清廉潔白」という文人の理想を表したものであった。日本では松が一番、次に竹、梅と続くが本来、このようなランク付けの意味は持たない。

日本の正月には門松は欠かせないが、この風習は平安時代から始まり江戸時代に盛んになったものである。これは古くから木の梢には神が宿ると考えられており、松などの常磐木は神聖な木とされ歳神さまを正月に迎える時の依代(神を導き入れるためのもの)であった、またその神が悪霊や邪気を家に入るのを防ぐことを願ったものでもある。

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No.54 コノテガシワ

コノテガシワ

科・属名

ヒノキ科 Cuppressaceae

コノテガシワ属 Pladycaldus

学名

Thuja orientalis L. あるいは、Platycladus orientalis (L.) Franco,  Biota orientalis Endl.

英名

Chinese arborv-itae, blota, oriental thuja、Bookleaf pine, Oriental Arbor-vitae

和名の由来

枝が直立する様子は子どもが手の平を上げている姿に似る。「児の手柏」である。

学名の由来

Platycladus ギリシャ語 広い茎を持つ。Orientalis 東洋の。

木の特性

分布

朝鮮半島、中国東北部が原産。

日本には江戸時代に中国から渡来。その後鑑賞樹としてヨーロッパなど世界中でも植栽。乾燥にやや弱い。充分な灌水が必要。

形態

常緑針葉高木。雌雄同株。

原産地では樹高が20mにも届くものがあるが、日本ではせいぜい10m程度の小高木である。

枝はほぼ直立し、枝葉は間延びしてヒノキに似る。通常葉の裏にある白色の気孔帶が白色ではないので、葉の表裏の区別が無いように見える(ヒノキ属では裏表の別がある)。

通常市販されているのはセンジュという園芸品種で、コノテガシワそのものは植物園、樹木園以外ではあまり見かけない。

葉は卵形、十字対生、うろこ状、2㎜ほど。

葉は1年目には緑色、2年目は褐色、3年目に落葉する。

春に開花、単生して枝先につく。雌花は白緑色、卵円形、種鱗の先端は外に反り返る。雄花は黄褐色で球形。

球果は角張って、固有な形状、淡青緑色。秋に熟すと褐色になる。

球果には種子が4個、だ円形、黒褐色。種子には翼がない。

特性

葉はα―ピネン、ツヨン、フェンコンなどのモノテルペン、カリオフィレンなどのセスキテル炭化水素、カジノールなどのセスキテルペンアルコール類のほか、フラボン類も含む。

生薬

生薬名

柏実 神農本草経(上)はコノテガシワThuja orientalis L.で同じ

使用部分

種仁

採集時期・方法

秋、裂ける前の球果を採取し、たたいて種子を取りだし、種鱗と種皮を石臼で挽いてとりさり、種子だけ集めて陰干しにする。

色・味・香り

淡黄褐色。

撰品

肥厚し、大形のもの。

主な薬用成分

油脂 サポニン

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

甘、平

応用・利用

滋養強壮(乾燥した種子をフライパンなどで、軽く炒ってからすり潰し、1日量5~15gを3回に分けて分服する。

心血の不足による動悸・不眠・多夢・身体衰弱・便秘・抜け毛に用いる。民間療法として、葉を血便 月経過多 吐血 喀血などの止血に使用。樹枝及びコルク層を除く根皮も薬用にする。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

庭園樹、公園樹、生垣として植栽されている。若い枝、種子を生薬とする。

「カシワ」は「炊ぐ葉(かぐは)」の意があり、煮炊きした料理を盛りつける葉のことである。古くはコノテガシワの葉はブナ科のカシワなどと共に料理を供する皿として用いた。

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No.55 カヤ

カヤ

科・属名

イチイ科 Taxaceae

カヤ属 Torreya

学名

Torreya nucifera (L.) Sieb. et Zucc.

英名

Kaya. Japanese nutmeg-yew

和名の由来

材をいぶして蚊の防虫に使われたことからカヤの語源は「蚊遣り」に由来する。

学名の由来

Torreyaは米国19世紀の植物学者Jphn Torrey に因む。Nucifera 堅果を持ったの意。

木の特性

分布

日本の九州、四国、本州(群馬県、福島県が北限)朝鮮半島に分布。

暖帯林に生育。

形態

常緑針葉樹。雌雄異株。

幹は直立し、高木となると開花結実する。成長は遅いが寿命は長い。

樹皮は灰褐色、老木では縦に割ける。若枝は緑色。枝は対生し、側枝は三叉状に伸びる。

葉は水平に2列に対生、3㎝ほどの線形、先は鋭く尖る。葉の表面は緑色、革質、硬い(イヌガヤは柔らかい葉)。

春に開花。雄花は1㎝ほどで黄色、だ円形、前年枝の根本につく。雌花は当年枝の基部の葉の付け根に2個付くが結実するのは多くの場合その内の1個。

果実はだ円形、裸子植物には果皮はないので種子を被うのは緑色で繊維質の仮樹皮。翌年の秋に熟すと紫褐色。堅果。

種子の外種皮は硬く、淡褐色、だ円形,内種皮は膜状で剥がれにくい。

特性

果実から肉質の外種皮を除いた種子が薬用とされるが、これにはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸が含まれる。葉はリモネン、カンフェン、ヌシフェラール、ヌシフェロールなどのテルペン類を含む。

種子を炒って食べると夜尿症に効果があると言われている。

辺材は黄白色、心材は褐色を帯びた黄色。

木理はおおむね通直で、肌目は精で、油気が感じられ、磨くと光沢が出る。

材には香りがあり、奈良、平安時代の仏像にはヒノキ、クスノキと並んでカヤを材料としたものが少なくない。

カヤ2

生薬

生薬名

彼子、カヤTorrey nucifera (L.)Sieb.etZUCC. 神農本草経(下)はカヤTorreya grandis Fort.である。

使用部分

種子

公定書

日本薬局方 ―

  局外生規  ―

  中共薬典  ―

薬性・薬味

甘、温

応用・利用

消腫・潰膿・止痛の作用があり、膿のあるおでき・心腹痛・尿血・インポテンツ・遺精に用いる。

暮らしの中での用途や木にまつわる話など

材は淡黄色で光沢があり、緻密、独特の芳香がある。心材は褐黄色、辺材は黄白色、しかし心材、辺材の区別は不鮮明。

耐朽性、保存性が高く、加工しやすく、建材、器具材、風呂桶、船材に利用される。

碁盤、将棋盤は最高級品、駒はツゲ、盤はカヤと言われるほど。碁盤用のカヤ材では宮崎産が最もよいとされており、製材後の材を10年近くかけて自然乾燥させる。彫刻などの工芸品にも加工される。

種子は薬用。種子油は食用、頭髪用、燈火用に用いられていた。

各地に樹齢数百年を越える巨大な古木が保存されている(三重県伊賀市島ヶ原中村、福島県桑折町、宮城県柴田郡柴田町、愛知県新城市黄柳野郷ヶ平、鹿児島県霧島市福山町など)。 カヤの果実は相撲の土俵の鎮め物としても使われている。米、塩、スルメ、昆布、栗と共に土俵中央の孔に埋められている。

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目次を開く 項目の説明

項目の説明

1. 色・味・香りについて

生薬を目・舌・鼻で味わい感じ、性状・撰品・薬性薬味などの参考にする。

2. 撰品

色・味・香り、その他成分含量等により、生薬の良し悪しを知る判定基準とする。

3. 公定書

市場に流通している生薬の基準を定めた各国の基準書。

日本薬局方(局方と略す)、局方外生薬基準(局外生基と略す)以上日本。

中華人民共和国薬典(薬典と略す)を今回は取り挙げて、記載した。

"-"の記載は収載されていないことを表す。

4. 薬性薬味

生薬の作用効果をあらわす手段の一つ。

薬性

温める・興奮させるなどの作用を"熱・温"で表わし、冷やす・鎮静させるなどの作用を"寒・涼"で表す。

そのどちらでもない作用を"平"とする。

薬味

生薬を味わって、薬効作用を類推する。

例えば、

  • 辛い(辛と記載。=発汗)
  • 苦い(苦と記載。=消炎)
  • 甘い(甘と記載。=緩和)
  • 酸っぱい(酸と記載。=収斂)
  • 塩からい(鹹と記載。=凝りや塊をやわらくする)

※()内の=は作用を表す。